悪性リンパ腫のうち約5%を占める病型で,発症のピークは20歳代の若年者層と50~60歳代以上の中高齢者層との二峰性である。若年者層では結節硬化型が,中高齢者層では混合細胞型の頻度が高い。無症候性の頸部,鎖骨上リンパ節腫大ほか,健診の胸部X線撮影で縦隔腫瘍として発見されることもしばしばある。リンパ節腫大は一般に数週~数カ月で増大する。進行すると発熱などの全身症状をきたす。
確定診断には腫瘍組織の生検が必須である。針生検よりも,リンパ節切除生検が望まれる。病理組織では,CD30陽性大型細胞であるHRS細胞を確認する。血液検査では,白血球増加,リンパ球減少,好酸球増多,CRP高値,赤沈亢進などを認めるが,特異的所見ではない。FDG-PETは,診断後の病期決定や寛解の確認に有用である。
化学療法に感受性が高く,半数以上に治癒を望める疾患である。まずAnn Arbor分類(またはLugano分類)によって限局期(Ⅰ,Ⅱ期)と進行期(Ⅲ,Ⅳ期)に分類する。限局期である場合には,さらにGHSG(German Hodgkin Study Group),NCCN(National Comprehensive Cancer Network)などが提唱する予後因子によって高リスク群,低リスク群に分類し,治療方針を決定する。
限局期予後良好群では,ABVD〔ドキソルビシン(アドリアマイシン)+ブレオマイシン+ビンブラスチン+ダカルバジン〕療法と病変部位放射線治療(ISRT)の併用治療(CMT)を実施する1)。患者の年齢や病状,希望により,ABVD単独治療1)ほか,ABVD療法とISRT双方の減量も考慮される。限局期予後不良群では,CMTほか,ABVD単独治療1),ABVD療法2コース後のFDG-PET所見を参考としてその後の治療法を層別化する方法も検討される2)。
進行期例に対しては,ABVD療法2コース後のFDG-PETによる層別化治療2)ほか,抗腫瘍薬付加抗CD30抗体(ブレンツキシマブ ベドチン:BV)併用AVD〔ドキソルビシン(アドリアマイシン)+ビンブラスチン+ダカルバジン〕療法3)を実施する。なお,治療開始前に患者の臓器機能(心機能,呼吸機能,末梢神経障害など)を評価し,治療レジメンや投薬量の調整を行う。
再発・難治例に対する標準治療は確立していない。60歳未満では,救援化学療法後の自家造血幹細胞移植併用大量化学療法が推奨される。また,治療抵抗例などでは,BVほか免疫チェックポイント阻害薬である抗PD-1抗体薬(ニボルマブ:NIVO,ペムブロリズマブ:PEM)も使用される。
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