von Willebrand病(von Willebrand disease:VWD)は,血中von Willebrand因子(VWF)の低下によって止血困難となる遺伝性の疾患で,両親のどちらかがVWDであることが多い。出血症状は,一次止血の異常による皮膚粘膜出血が主体である。
反復する皮膚粘膜出血(鼻出血,口腔内出血,月経過多,消化管出血など)や顕性遺伝形式を疑う出血傾向の家族歴があった場合。
教科書的にVWDではAPTT延長があるとされるが,基準範囲内の場合もある。出血症状や家族歴から疑わしい場合は,血漿VWF(抗原量,活性値)を測定し,30%未満のときに診断する。病型はVWF量の低下(軽症1型,重症3型),VWFの質の異常(2型)にわけられる(2型はさらに機能別に2A・2B・2M・2Nに分類される)。血液型O型の場合は,一般的に低値になるため診断に注意する。
VWDに対する止血療法は,①デスモプレシン,②VWF製剤,③補助療法にわけられる。出血時の治療方針については,事前に専門家による病型分類が重要である。
①デスモプレシン:血管内皮細胞からのVWF放出を促進する。一般的には1型に効果が期待でき,重症の3型には無効である。2B型は異常VWFの放出促進によって,血小板減少をきたすため禁忌である。事前に試験投与による治療効果を確認する。デスモプレシンは繰り返し投与で効果が減弱するため,大出血や大きな観血的処置のときには適応とならない。
②VWF製剤:ヒト血漿由来製剤と遺伝子組換製剤がある。2B型,3型の止血管理,およびデスモプレシンが適応とならない大出血や大きな観血的処置には第一選択である。
③補助療法:①,②の補助療法,または軽度の鼻出血,月経過多,歯科処置には線溶抑制薬であるトランサミンⓇ(トラネキサム酸)を用いる。
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