血栓性血小板減少性紫斑病(thrombotic thrombocytopenic purpura:TTP)は,全身の微小血管に血小板とvon Willebrand因子(VWF)を中心とした微小血栓が形成される致死的な疾患である。その病因はVWF切断酵素であるADAMTS13活性が著減することで,血小板との結合能力が高い超高分子量VWF重合体(UL-VWFM)が切断されずに残存することによる。TTPには先天性と後天性が存在するが,ほとんどの症例が後天性である。先天性TTPはADAMTS13遺伝子の異常により,後天性TTPはADAMTS13に対する自己抗体(インヒビター)が産生されることにより,ADAMTS13活性が著減する。
原因不明の血小板減少と溶血性貧血が存在し,ADAMTS13活性が10%未満に著減している場合にTTPと診断する。AD AMTS13に対するインヒビターが存在すれば後天性と診断し,存在しなければ先天性が疑われる。インヒビター陰性と判断するのは困難なことが多く,先天性TTPはADAMTS13遺伝子解析によって確定診断される1)。
現状では,ADAMTS13を補充する方法は新鮮凍結血漿(FFP)投与しかないため,先天性の場合はFFP輸注を行う。後天性はできるだけ早く治療を開始することが,予後の改善につながる。
後天性TTPに対する急性期治療として,血漿交換とステロイド治療が行われてきた。2022年に,VWFに対する抗体療法であるカプラシズマブが日本でも使用できるようになり,急性期治療の三本柱となった。血漿交換が有効である理由として,ADAMTS13インヒビターとUL-VWFMの除去,ADAMTS13の補充などが予想されている。副腎皮質ステロイドは抗体産生の抑制,カプラシズマブは血小板とVWFの結合を阻害することで微小血栓形成抑制によって,効果があると考えられている。
後天性TTPは再発の多い疾患であり,また上記の急性期治療が有効でない場合がある。このような再発・難治の後天性TTPには,リツキシマブを使用する。リツキシマブは,CD20に対するモノクローナル抗体であり,これによってADAMTS13インヒビターの産生を抑制する。なお,リツキシマブの病初期での使用は,日本国内では保険適用となっていないので注意が必要である。
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