【質問者】
小野澤真弘 北海道大学大学院医学研究院血液内科学講師
【DDX41遺伝子の胚細胞変異を有する場合,骨髄系腫瘍発症の浸透率は高いため,患者および家族への開示を検討する】
造血器疾患における網羅的遺伝子パネルにより,胚細胞変異(生殖細胞変異)を伴う骨髄系腫瘍(myeloid neoplasms with germline predisposition)と診断された場合,特にDDX41遺伝子の胚細胞変異が見つかった場合の診療ポイントに関して解説します。
牧島らの論文1)が非常に参考になりますが,DDX 41遺伝子の変異部位が重要であるため,まず骨髄系腫瘍発症の有意なリスクと考えられている胚細胞変異(p.A500fs等)の有無を確認します。またDDX41胚細胞変異に体細胞変異(p.R525H等)が加わり骨髄系腫瘍を発症すると考えられていますので,その有無も確認します。骨髄系腫瘍の家族歴も重要です。DDX41胚細胞変異を有する場合,骨髄系腫瘍発症の浸透率(疾患を発症する割合)は60歳で10%,70歳で25%,90歳で49%と報告されています1)。発症年齢が他の遺伝子の胚細胞変異を持つ骨髄系腫瘍に比べて高齢であり(中央値69歳),また,男性に多く,正常核型を呈し,予後良好であることなどの特徴が知られています。
まず,遺伝性素因判明時の開示希望がある場合は,治療のタイミングをみて遺伝子専門医や遺伝カウンセラーとともに結果を開示します。その際に,家族への開示希望の有無を確認します。家族への開示希望があり,かつ家族への説明希望がある場合に,家族に説明の上,遺伝子変異の検査を受けるかどうかを確認し,希望があれば検査を実施します。しかし,原疾患の治療として同種移植が必要であり,血縁ドナーを検討する場合は状況が複雑になります。DDX41胚細胞変異を有する血縁ドナーから移植を実施した場合,ドナー細胞由来白血病を発症する症例が報告されていますが,実際の頻度は不明です2)。
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