血友病の治療は進化を遂げている。安全性の高い遺伝子組み換え製剤,静脈注射の負担を軽減するためにPegやFc,アルブミンを結合させるなど様々な工夫を凝らした半減期延長型遺伝子組み換え製剤(extended half-life product:EHL),さらには非凝固因子製剤であるエミシズマブが,世界初の皮下注射製剤として2018年に登場した。今後も様々なコンセプトの治療薬が登場することになる。究極の治療薬と思われていた遺伝子治療薬も既に欧米では発売されており,治験ではなく市販薬として投与を受けた患者も存在するという。2023年の究極の目標は“hemophilia-free mind”とうたわれていたほどである1)。
それでもなお,抑制できない出血,特に患者自身が気づいていない無症候性の出血により,関節症が進行することが知られるようになった。それを防ごうと発達した画像診断,治療薬発展の恩恵を受け,患者の平均寿命が一般人と同等になってきた。しかし,今まで経験しなかった血栓症の発症,出血しない,発症しないと思われていた保因者女性が実は出血で困難を抱えており,医療者も本人もそれに気づいていないなど,様々な新しい課題が見えてきている。