□意義不明の単クローン性免疫グロブリン血症(monoclonal gammopathy of undetermined significance:MGUS)は,B細胞あるいは形質細胞の単クローン性増殖により単クローン性の免疫グロブリン(M蛋白)が検出されるものの,血清M蛋白量は3g/dL未満かつ骨髄中の形質細胞が10%未満で,他のB細胞性腫瘍が否定され,かつ臓器障害がないことと定義されている。
□治療の必要はないが,悪性リンパ腫や多発性骨髄腫への進展を念頭に置いて経過観察する必要がある。MGUSの頻度は加齢とともに増加し,白人では50歳代で1%,70歳代で3%程度と考えられている。
□症状はない。健診などでM蛋白血症や総蛋白高値(免疫グロブリンの増加を疑う)を指摘されて発見されることがある。
□診断は,国際骨髄腫ワーキンググループ(International Myeloma Working Group:IMWG)による診断規準が2014年に改訂されており(表1)1),これに従う。
□血清IgG,IgA,IgM,(IgD)を測定する。多発性骨髄腫ではM蛋白以外の免疫グロブリンは減少しているが,MGUSでは保たれていることが多く,鑑別の一助となる。
□血清,尿(部分尿)の免疫電気泳動法(immunoelectrophoresis:IEP)により,M蛋白を同定する。
□血清の蛋白電気泳動法(protein electrophoresis:PEP)を施行し,血清総蛋白(g/dL)にMピーク分画の割合を乗じたものが血清M蛋白量である。ただし,IgM型の場合は血清IgMの濃度をM蛋白量としてよい。
□尿蛋白高値(≧500mg/24時間)が疑われる場合は,24時間蓄尿検体で尿蛋白量と尿PEPを施行し,血清と同様に尿M蛋白量を算出する。
□CRABで定義される臓器障害(表2)1)をすべて認めないことを確認し,1つでも該当すれば多発性骨髄腫である。すなわちC:高カルシウム血症,R:腎障害,A:貧血,B:全身骨単純X線(頭蓋骨,椎体,骨盤,肋骨,長管骨,および疼痛部)で溶骨病変を検索する。
□手根管症候群,拡張型心筋症,アルブミン尿,慢性の下痢など,アミロイドーシスを疑う症状にも気を配る。
□IgM型の場合は,治療が必要なワルデンシュトレームマクログロブリン血症(Waldenström macroglobulinemia:WM)との鑑別を念頭に置き,表32)に示す異常をチェックする。
□骨髄穿刺を施行し,免疫染色あるいはフローサイトメトリーで単クローン性の形質細胞割合を評価する。進展リスク評価のため,染色体G-banding法,FISH法(IgH-FGFR3)も行う。
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