□(おそらく)ウイルス感染により破壊性甲状腺障害をきたす疾患である。
□破壊性障害とは,濾胞からのホルモン漏出にはじまり濾胞機能が修復するまでの間に,FT4値が正常→過剰→正常→低下→正常と多相変化するパターンを指し(TSHはやや遅れた逆パターン),本症と無痛性甲状腺炎(慢性甲状腺炎を基盤に発症),アミオダロン誘発性甲状腺中毒症Ⅱ型などがこれに属する。
□亜急性甲状腺炎では,①炎症が腺内で巣状に起こり痛く硬く腫脹する,②炎症巣が移動しやすい,③周期的な流行傾向がある,④少~中等量の副腎皮質ホルモンが痛みに著効する,ことが特徴である。
□代表的な症状は,持続する発熱・頸部局所の疼痛~腫脹・全身倦怠感・頻脈である。痛みは数週間持続し嚥下で増強する自発痛・圧痛で,下顎や耳介に放散することもある。また,痛みは同部位局所の腫脹も伴うが,これが時に移動してゆくのも特徴である。
□典型的には「風邪かと思っていたら痛みがしつこくて辛い」「硬いしこりが不気味」「だるくて体重も減った」という時期をしばらく経過してから,遅れて医療機関を訪れる。炎症と甲状腺ホルモン過剰という2病態ともに軽~中等度で,感冒と見分けがつきにくいため,と思われる。
□検査所見上は,初期~極期には血沈亢進・CRP中等度陽性・FT4中等度上昇・TSH抑制が典型的であるが,多くのやや遅れて来院する患者の場合,FT4は正常化していてTSH抑制や総コレステロール低下だけが残存していることも少なくない。
□甲状腺エコーでは,疼痛部位に一致して巣状の低エコー域を認める。
□鑑別すべき疾患として,ホルモン過剰症としてはバセドウ病や無痛性甲状腺炎,痛みを伴う腫大としては,甲状腺腫瘍,甲状腺嚢胞内出血,慢性甲状腺炎の急性増悪などが重要である。
□TSH受容体抗体が一過性に上昇することがあるが,破壊組織が抗原性を発揮したための反応性の現象で,バセドウ病と異なり持続陽性にはならない。
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