インスリンの極端な欠乏とインスリン拮抗ホルモンであるグルカゴン,コルチゾール,カテコラミンなどの過剰によってもたらされる病態であり,著しい高血糖,高ケトン血症,アシドーシスと脱水をきたす。1型糖尿病(劇症1型糖尿病を含む)の初発症状,1型糖尿病患者での感染症,急性胃腸炎などの急性代謝失調の際のインスリン注射のマネジメントエラー(インスリン注射の減量や中止),2型糖尿病患者であっても大量の糖質摂取(ソフトドリンクケトーシス),ステロイドホルモン,向精神薬〔セロクエルⓇ(クエチアピンフマル酸塩)〕などの薬剤が発症の契機となることもある。SGLT2阻害薬を使用している患者では,血糖値の著しい上昇を伴わない正常血糖DKA(euglycemic DKA)を呈することがある。
1~2日の経過での急激な口渇,多飲,多尿,倦怠感,腹痛,嘔気などの症状を主訴とすることが多い。臨床症状としては,代謝性アシドーシスを補正するための過呼吸(Kussmaul呼吸),呼気のアセトン臭,口腔粘膜の乾燥,低血圧,頻脈などを認める。
検査所見としては高血糖,高ケトン血症,代謝性アシドーシスを認め,米国糖尿病学会/欧州糖尿病学会(ADA/ EASD)ではそれぞれの基準を,高血糖:≧200mg/dLまたは糖尿病の既往,高ケトン血症:β-ヒドロキシ酪酸≧3.0mmol/Lないしは尿ケトン定性≧2+,アシドーシス:pH<7.3ないしはHCO3-<10mmol/Lとするコンセンサスレポートを2024年に公表している。
著しい脱水があるにもかかわらず,高血糖のために偽性低ナトリウム血症をきたすことがある。一般に血糖値が100mg/dL増加すると血清ナトリウムの測定値は1.3~1.6mEq/L低下する。
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