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ポルフィリン症[私の治療]

No.5268 (2025年04月12日発行) P.48

大門 眞 (至誠堂総合病院健康増進センターセンター長)

登録日: 2025-04-13

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  • ポルフィリン症とは,ヘム合成経路に関与する8つの酵素のいずれかの先天異常が病因でヘム合成経路が亢進し生じる9つの疾患の総称である。臨床的には,急性発作を生じる急性ポルフィリン症〔デルタアミノレブリン酸(ALA)脱水酵素欠損ポルフィリン症(ADP),急性間欠性ポルフィリン症(AIP),遺伝性コプロポルフィリン症(HCP),多様性ポルフィリン症(VP)〕と,光線過敏性皮膚炎を生じる皮膚ポルフィリン症〔先天性骨髄性ポルフィリン症(CEP),晩発性皮膚ポルフィリン症(PCT),肝性骨髄性ポルフィリン症(HEP),プロトポルフィリン症(EPP),X連鎖顕性プロトポルフィリン症(XLPP),および間欠期のHCPとVP〕にわけられるが,本稿では急性ポルフィリン症について記載する。

    ▶診断のポイント

    【臨床症状】

    急性ポルフィリン症発作時には,急性腹症,イレウス,虫垂炎等を思わせる腹部症状,ヒステリー様の精神症状,末梢神経炎,ギラン・バレー症候群,スモン,てんかん等を思わせる神経症状を呈する(三徴:腹部症状,精神症状,神経症状)。これら症状は同時に現れるのではなく,急性腹症を思わせる腹部症状が初期にみられ,後にヒステリーを思わせるような精神症状を呈し,最後には四肢麻痺,球麻痺等の神経症状を呈し,死に至ることもある。すなわち,症状は病状の進行に伴い多彩に変化する。発作の初期,腹部症状が主の段階で速やかに診断し,治療を開始することが重要である。腹部症状に対応する器質的な異常は認められず(原因不明の腹痛),神経系の機能的異常によるものと考えられている。よくみられる症状は嘔気,嘔吐,便秘,下痢,腹部膨満,腸閉塞,尿閉,失禁,排尿異常,頻脈,高血圧,発熱,発汗過多である。非発作時(間欠期)は無症状だが,HCPおよびVPでは,光線過敏性皮膚炎が時にみられる。

    【診断・検査所見】

    病型診断は,病因遺伝子異常によるヘム合成経路酵素活性低下部位より上流の基質や代謝産物の測定によって行われる1)。しかし,急性発作時の治療は病型によらないので,急性ポルフィリン症との診断が重要であり,尿中ポルフォビリノーゲン(PBG)およびALAの増加の確認で可能である。尿は,10~30%の症例で特有のぶどう酒色を呈する(ポルフィリン尿)が,ADPやAIPでは尿中ポルフィリンはあまり増加せず褐色調にとどまることが多い。非特異的な所見としては,肝障害,低ナトリウム血症〔抗利尿ホルモン不適合分泌症候群(SIADH)によるとされる〕,耐糖能異常,乳酸,ピルビン酸増加,高コレステロール血症,高中性脂肪血症,心電図での虚血性変化,等が挙げられる。

    非発作時には検査異常がはっきりしない場合があるので,発作時に検査することが重要である。患者家系内の未発症者(潜在者)の診断には,遺伝子解析が必要になることもある。本症は難病に指定され,病因遺伝子解析は保険適用で検査会社に依頼可能である。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    急性発作を予防し,また,早期の対応により重症化を防ぐ。

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