□狭義の組織学的分類では,良性腫瘍に含まれる概念はそのほとんどが濾胞腺腫である。
□触診,超音波検査などで発見される結節の多くは,病理学的には腫瘍様病変に分類される腺腫様甲状腺腫(腺腫様結節)である。
□超音波検査での甲状腺結節の発見率は20%前後と高く,男性より女性に多い。
□この項では,甲状腺癌取扱い規約1)の"腺腫"と"腺腫様甲状腺腫"を,便宜的に良性腫瘍として記載する。
□画像診断の進歩により,頸動脈エコーや胸部CT検査時に,無症状で発見される例が増えている。
□頸部の触診で指摘される場合もある。
□大きく腫大した場合は,視診でも明らかとなり,頸部違和感,嚥下障害などをきたしうる。
□通常単発性で線維性被膜に囲まれ,周辺甲状腺組織を圧排性に増殖する。
□臨床的狭義に"腺腫様甲状腺腫"という場合は,甲状腺全域がほぼ腺腫様組織に置換されて腫大したものを指す。実際には,正常像に近い甲状腺に複数個"腺腫様結節"が認められる場合が圧倒的に多い。
□甲状腺が非腫瘍性,結節性増殖により腫大する多発性病変で,出血,壊死,嚢胞形成,石灰化など多彩な変化を伴う。
□腺腫と異なり,全周性の被膜形成を欠き,周囲甲状腺組織に対して圧排性増殖を示さない。
□血清サイログロブリンが軽度上昇する場合がある。
□一般に甲状腺機能は正常であるが,自律性機能性甲状腺結節(autonomously functioning thyroid nodule:AFTN)の場合には,遊離T3,遊離T4が高値となる。
□画像診断の第一選択は,超音波検査である。
□悪性腫瘍(特に甲状腺乳頭癌)との鑑別には,日本超音波医学会が提示した,甲状腺結節超音波診断基準2)を参考に鑑別を行う。悪性が否定できない場合には,穿刺吸引細胞診(fine-needle aspiration cytology:FNAC)で確認する。
□超音波検査では,境界が明瞭で平滑,内部は比較的均質なことが多い。時に嚢胞形成,石灰化を伴う。
□画像のみからは,微小浸潤型濾胞癌との鑑別は困難である。摘出標本で初めて明らかにされる例もある。
□超音波で観察される甲状腺内の結節の中で,最も高頻度に遭遇する疾患である。
□超音波画像で充実性の場合には,境界がやや不鮮明,内部が甲状腺組織と比べ,等しいかやや低エコーとなる。嚢胞形成が主体の場合には,コロイドを反映するコメットサインを有する高輝度スポットが特徴的である。
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