□代表的な腫瘍随伴症候群で,進行がん患者の約20~30%に随伴し,予後不良である。
□入院患者の高カルシウム(Ca)血症の原因として最も頻度が高い。
□ほとんどのがん種でみられるが,特に乳癌,肺癌,多発性骨髄腫,成人T細胞白血病/リンパ腫(adult T-cell leukemia/lymphoma:ATL)などで頻度が高い。
□原因としては,約80%が悪性腫瘍から産生される液性因子によるhumoral hypercalcemia of malignancy(HHM),約20%が広範な骨転移や局所的な骨溶解による局所性骨溶解性高Ca血症(local osteolytic hypercalcemia:LOH)である。
□HHMの惹起因子としては,副甲状腺ホルモン(parathyroid hormone:PTH)関連蛋白(parathyroid hormone-related protein:PTHrP)がほとんどである。
□悪性リンパ腫では,1α-水酸化酵素のPTH非依存性発現亢進に基づく活性型ビタミンDの産生過剰による場合がある。
□LOHの骨破壊は,腫瘍から局所で産生・分泌される各種サイトカインによる,破骨細胞の活性化により惹起される。
□副甲状腺癌の場合には,PTH分泌過剰による高Ca血症を伴う。異所性PTH産生腫瘍は非常に稀である。
□表に示す。血清補正Ca濃度12mg/dL未満程度の軽度の高Ca血症では無症状である。血清補正Ca濃度12~14mg/dL未満の中等度になると,食思不振,嘔気・嘔吐などの消化器症状と,腎での尿濃縮力低下による多飲・多尿が出現する。
□これらの結果,脱水が高度に進行すると,高Ca血症が急速に増悪して,急性腎不全,傾眠,昏睡などを呈する高Ca血症クリーゼと呼ばれる重篤な状態に陥ることがある。
□骨破壊や骨吸収が著明に亢進している場合は,骨痛を伴う。原発性副甲状腺機能亢進症とは異なり,通常高Ca尿症は長期に続かないため,尿路結石症の合併は少ない。
□血清補正Ca↑:Payneの式:血清補正Ca(mg/dL)=血清Ca測定値(mg/dL)+〔4-血清アルブミン(Alb)値(g/dL)〕(Alb<4.0g/dLのときのみ)
□血清リン↓:〔腎尿細管リン再吸収閾値TmP/GFR↓(腎機能障害を伴う場合を除く)〕。
□尿検査:尿中Ca↑〔尿中Ca/Cr>0.3,FECa↑(>2%)〕,尿中リン↑〔(TmP/GFR↓)〕。
□PTH:↓副甲状腺癌以外,↑副甲状腺癌。
□副甲状腺ホルモン関連ペプチド(PTHrP):↑HHMの大多数,↓LOH。
□HHMが疑われるが,PTHrP,PTHともに低値の場合:1,25(OH)2ビタミンD(保険適用がないので,症状を詳記する)。
□骨転移や骨破壊・骨溶解亢進が疑われる場合:骨転移マーカー(ICTP)↑,骨代謝マーカー(PICP,BAP,TRACP-5b,NTXなど)↑。
□骨形成マーカーは,上昇していない場合がしばしば認められる。
□多発性骨髄腫や悪性リンパ腫が疑われる場合:蛋白分画・免疫グロブリンなど。
□動脈血液ガス検査:pH↑,HCO3−↑,pCO2↑(原発性副甲状腺機能亢進症とは異なり,代謝性アルカローシスを示す場合が多い)。
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