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偽性副甲状腺機能低下症

登録日:
2017-03-16
最終更新日:
2017-07-21
中山耕之介 (がん研究会有明病院総合診療部長)
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  • ■疾患メモ

    本症は,副甲状腺ホルモン(parathyroid hormone:PTH)に対する標的臓器での反応性が先天的に低下している遺伝性疾患の総称である。

    PTHの分泌は正常であるが,低カルシウム(Ca)血症・高リン(iP)血症などの副甲状腺機能低下症を呈する。表1にその診断基準を示す。

    10_19_偽性副甲状腺機能低下症

    本症は,PTH負荷に対し尿中cyclic AMP(cAMP)およびリン酸排泄促進反応両者に障害が認められるⅠ型と,cAMP排泄反応は正常で,尿中リン酸排泄促進反応のみが低下しているⅡ型に大別される。

    Ⅰ型はPTH受容体からアデニル酸シクラーゼ系までの,Ⅱ型はcAMP産生以降の細胞内情報伝達系の異常が想定されている。

    ほとんどの症例はⅠ型で,Ⅱ型報告例の多くはその後ほかの疾患と判明している。Ⅱ型は存在してもごく稀である。

    Ⅰ型はさらに,PTH受容体からアデニル酸シクラーゼに情報を伝達するGs蛋白活性の低下を認めるⅠa型,アデニル酸シクラーゼのcatalytic unitの異常が想定されるⅠc型と,これらに異常を認めないⅠb型に細分される。Ⅰ型の約半数がⅠa型である。

    Ⅰa型では,Gsαサブユニット遺伝子(GNAS)に変異が認められ,後述するAlbright骨異栄養症という特徴的な身体症状を呈する。

    Ⅰb型はPTH受容体遺伝子に変異は認められず,GNASのゲノムインプリンティングの異常と考えられている。Ⅰc型はごく稀である。

    Ⅰa型と同様にGNASの変異があり,Albright骨異栄養症を示すが,腎のPTH反応性は障害されておらず,Ca,iP代謝に異常を認めない病態が,偽性偽性副甲状腺機能低下症である。変異GNASが母親に由来する場合に偽性副甲状腺機能低下症Ⅰa型,父親に由来する場合に偽性偽性副甲状腺機能低下症となる。

    これら病型分類のため,PTH負荷試験であるEllsworth-Howard試験を行う()。表2にEllsworth-Howard試験による病型分類を示す。

    10_19_偽性副甲状腺機能低下症

    10_19_偽性副甲状腺機能低下症

    ■代表的症状・検査所見

    【症状】

    低Ca血症による症状は,すべての型に共通してみられ,神経・筋の興奮性亢進による全身痙攣,てんかん,テタニー発作,感覚異常など,精神・神経系の機能異常による精神不穏状態,不安,抑うつ,精神発達遅延,認知障害などが認められる。

    そのほか,循環器症状として心不全,低血圧などや,白内障,歯牙発育障害がしばしばみられる。

    身体所見として低Ca血症によるChvostek徴候,Trousseau徴候などが有名である。これらに加えて,Ⅰa型ではAlbright骨異栄養症による円形顔貌,低身長,第4中手骨・中足骨の短縮,皮下骨腫,肥満など,特徴的な身体所見を認める。

    【検査所見】

    血清Ca↓,iP↑,PTH↑,1,25(OH)2D↓,尿中Ca正常。心電図でのQTc延長,不整脈。

    中手骨,中足骨の短縮,頭部CTにて大脳基底核石灰化。

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