□高脂血症と血中高比重リポ蛋白-コレステロール値(HDL-C)の低下は,冠動脈疾患との関連が認められているが,HDL-C低下以外の低脂血症は,それ自体が問題となることは少ない。
□本疾患は健診や各種疾患でルーチン測定した血中コレステロール値(TC),血中中性脂肪値(TG),血中低比重リポ蛋白-コレステロール値(LDL-C),HDL-Cで診断されることが多い。
□特に,急にTCが低下した場合は,悪性腫瘍の検索が重要である。
□2013年11月に実施した「国民健康・栄養調査」によれば,男性5.7%,女性3.9%が低LDL血症(Friedewaldの式),男性0.4%,女性0.0%が低TC血症,男性3.7%,女性9.5%が低TG血症,男性12.1%,女性3.2%が低HDL血症と報告されている。なお,平成25年実施した「国民健康・栄養調査」のTGが40mg/dL未満の層別がなされていないため,ここでの低TG血症はTGが50mg/dL未満とした。
□[http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/eiyou/dl/h25-houkoku.pdf]
□HDL-Cの低下以外の,低脂血症それ自体による症状はない。
□HDL-Cの低下は,冠動脈疾患との関連が認められている。
□HDL-Cの低下症は様々な症状を呈する。
□Tangier病ではオレンジ扁桃,末梢神経障害を示し,Tangier病の20%に冠動脈疾患があるとの報告がある。
□家族性低レシチン-コレステロールアシルトランスフェラーゼ(lecithin cholesterol acyltransferase:LCAT)血症では角膜混濁,蛋白尿,貧血,腎機能障害の症状を示し,家族性低LCAT血症の中で角膜混濁のみを呈する魚眼病などがある。
□アポ蛋白A-Ⅰは,アミロイドβペプチドと結合してその凝集と毒性を排除するといわれ,アポ蛋白A-Ⅰの変異体が原因の低HDL血症患者は,アミロイドβペプチドが凝集して脳に沈着して発症するアルツハイマー病やアミロイドーシスも呈する場合がある。
□低脂血症はTCが120mg/dL未満,TGが40mg/dL未満,LDL-Cが70mg/dL未満を基準とし,低HDL血症はHDL-Cが40mg/dL未満を基準とする。
□低脂血症および低HDL-C血症は,原発(遺伝)性と二次(続発)性に分類される。原発(遺伝)性と二次(続発)性の鑑別のため,アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST),アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT),甲状腺刺激ホルモン(TSH),C-リアクティブ・プロテイン(CRP),血算などを測定する。
□そのほか,遺伝性を診断,否定するため,家族歴を聴取する。
□保険収載されている脂質関連検査として,アポ蛋白B,A-Ⅰ,LCAT,リポ蛋白リパーゼ(LPL),3%ポリアクリルアミドゲルディスク電気泳動(poly-acrylamide gel electrophoresis:PAGE)法がある。
□特に,PAGE法はリポ蛋白のサイズを反映し,HDL以外のリポ蛋白である超低比重リポ蛋白(very- low density lipoprotein:VLDL),中間比重リポ蛋白(intermediate density lipoprotein:IDL),低比重リポ蛋白(low-density lipoprotein:LDL)の脂質プロファイルを評価でき,小型で高密度のsmall dense LDLも容易に評価できる。
□原発(遺伝)性を疑う場合,その原因遺伝子を明らかにするため,超遠心法により,すべてのリポ蛋白を詳細に解明する。
□必要に応じて,HDL分画(HDL2およびHDL3)およびDNA解析が必要で,特にミクロソームトリグリセリド転移蛋白質(MTP),コレステロールエステル転送蛋白(CETP),肝性リパーゼ,ATP結合カセット輸送体(ABC1),アポ蛋白B,A-Ⅰの遺伝子を測定・評価して確定診断をする場合もある。
□加えて,必要に応じてアポ蛋白B-48,アポ蛋白B-100も評価するため,抗アポ蛋白B抗体を用いた免疫ブロット法を実施する。
□低LDL血症には機能低下型前駆蛋白変換酵素サブチリシン/ケキシン9(PCSK9),複合型低脂血症(低LDL血症,低HDL血症,低TG血症)にはアンジオポエチン関連蛋白質3(ANGPTL3)の遺伝子異常もあり,治療薬開発の点からも注目されているので,これらの遺伝子の測定も意義あることである。
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