□ポルフィリン症は,ヘム合成経路に関与する代謝酵素の活性が低下し,ポルフィリン中間代謝産物やそれらの酸化生成物が過剰に蓄積することにより生じる先天代謝異常症である。
□ヘムはヘモグロビン,ミオグロビン,シトクロム,シトクロムP450などの様々なヘム蛋白の合成に必要であり,約80%は骨髄の赤芽球系細胞,約15%は肝実質細胞で合成される1)。
□ヘムの生合成は,図のようにミトコンドリア内外に存在する8種の酵素により行われ,ポルフィリン症はδ-アミノレブリン酸合成酵素(δ-aminolevulinate synthetase:ALAS)を除いた7種の酵素活性のいずれかの低下・欠損により発症し,8病型が存在する。
□わが国の2010年までの報告では,晩発性皮膚ポルフィリン症(porphyria cutanea tarda:PCT)が最多で35.4%,続いて赤芽球性プロトポルフィリン症(erythropoietic protoporphyria:EPP)が21.9%,急性間欠性ポルフィリン症(acute intermittent porphyria:AIP)が21.4%であった2)。
□ポルフィリン症は,表のようにポルフィリン中間代謝産物が蓄積する臓器により,肝性と赤芽球性(骨髄性)に分類される。
□臨床的には,日光過敏症を主症状とする皮膚型と,腹痛発作を主とする急性型に分類されている。
□皮膚型ポルフィリン症の症状としては,水疱形成を伴う日光過敏症や皮膚色調の変化などの皮膚病変がみられ,神経障害は稀である。
□PCTでは,様々な程度の肝障害がみられるが,鉄過剰を伴う肝障害が主体である。
□EPPでは,約20%に胆石症などの肝障害,約5%で肝不全に進展することが知られている。
□急性ポルフィリン症は不安,不穏,不眠などの前駆症状に始まり,腹痛,嘔吐,便秘などの消化器症状,頻脈,発汗,高血圧などの自律神経症状,痙攣や四肢麻痺などの中枢神経症状を認める。球麻痺や呼吸筋麻痺などの重症神経合併症のため,約5~20%で致死的となる。
□遺伝性コプロポルフィリン症(hereditary coproporphyria:HCP),多様性ポルフィリン症(variegate porphyria:VP)では皮膚症状が出現するが,ALAD欠損性ポルフィリン症(δ-aminolevulinate dehydratase deficiency porphyria:ADP),AIPでは認めない。
□思春期以前に急性発作が生じることは稀であり,30歳代以降に出現することが多い。
□急性発作を呈する症例においては,first-lineの検査として尿中ポルフォビリノーゲンの上昇を確認する。
□尿中ポルフォビリノーゲンはAIP,HCP,VPの3病型で増加が確認できるが,AIPでは特に高値となる。
□尿中δ-アミノレブリン酸の測定は診断には必須ではないが,そのほかの腹痛の原因となる鉛中毒,チロシン血症,ADPの鑑別に有用である。
□発作間欠期には尿中,血液中,便中のポルフィリン濃度は,通常正常値を示すので注意が必要である。
□原因不明の日光過敏症を呈する皮膚型ポルフィリン症を疑う症例では,尿中,血液中,便中のポルフィリン体測定が有用であるが,現在わが国では便中ポルフィリン測定は行われていない。
□各病型における検査結果は表の通りである。臨床症状や各種生化学検査結果により病型診断はおおむね可能であるが,確定診断には遺伝子解析が有用である。
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