□抗リン脂質抗体症候群(antiphospholipid syndrome:APS)は,動・静脈の血栓症および習慣流産などの妊娠合併症をきたし,血中に抗リン脂質抗体〔抗カルジオリピン抗体(anticardiolipin antibodies:aCL)やループスアンチコアグラント(lupus anticoaglant:LA)〕が検出される自己免疫疾患である。
□約半数のAPS患者は全身性エリテマトーデス(systemic lupus erythematosus:SLE)をはじめとする自己免疫疾患に合併する二次性APSで,基礎疾患がない場合は原発性APSに分類される。
□わが国における推定患者数は原発性APS,二次性APSともに5000~1万人である。また,SLEの10~20%にAPSを合併していると推定されている。
□動脈血栓症では脳梗塞や一過性脳虚血発作などの脳血管障害が9割以上と多くを占めるが,心筋梗塞などの虚血性心疾患は比較的少ない。
□静脈血栓症は下肢の深部静脈,ついで表在静脈に多く,肺血栓塞栓症を合併することがある。ほかに腎静脈,肝静脈,腋窩静脈,鎖骨下静脈,網膜中心静脈,脳静脈洞などに血栓症をきたす。
□習慣流産,子宮内胎児死亡,自然流産などの不育症をきたす。
□APSにおける流産は妊娠中~後期に多い。
□心臓弁膜の肥厚・疣贅,精神・神経症状(てんかん,舞踏病,横断性脊髄炎,片頭痛など),腎障害,溶血性貧血,網状皮斑などがある。
□動静脈血栓症や習慣流産をきたした若年者およびSLE患者では,抗リン脂質抗体を測定する。
□APSでは固相化酵素抗体法で検出されるaCLと抗β2-
glycoproteinⅠ(β2-GPⅠ)抗体,そしてリン脂質依存性の凝固時間延長で判定されるLAが検出される。
□APSの分類基準で中等度以上の力価のIgG型またはIgM型aCLあるいは抗β2-GPⅠ抗体,およびLAが12週間以上の間隔をあけて2回以上検出され,2つ以上の検査所見が陽性であることがAPS診断の条件となっている(表)1)。
□APS患者の2~4割に血小板減少症をみることがある。
□血小板数5万~14万/μL程度の軽度血小板減少で,治療を要さないことが多い。
□APSでは血小板減少があっても血栓症をきたしうる。
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