強直性脊椎炎(ankylosing spondylitis:AS)は,脊椎関節炎(spondyloarthritis:SpA)に分類される疾患のひとつで,腰背部の慢性炎症性関節炎である。仙腸関節炎に加え,脊椎およびその近傍の軟部組織の炎症を特徴とする。さらに膝,股関節,肩などの末梢関節炎,および関節外症状として,ぶどう膜炎,炎症性腸疾患,乾癬や壊疽性膿皮症などを呈することがある。男女比3:1~9:1の割合で男性に好発し,発症年齢は40歳未満がほとんどで,罹患率のピークは20~30歳である。ASはHLA(ヒト白血球抗原)-B27と強い関連性があると報告されている。わが国のHLA-B27陽性率は一般人口の約0.3%で,このうちASを発症するのは10%未満であることから,日本人におけるAS患者は人口の0.02~0.03%の3万人前後と推測される。
45歳未満で発病し,3カ月以上持続(慢性または間欠的)する。特に誘因なくお尻の痛みや腰・背中の痛みを訴え,さらにこの症状は安静時や夜間ひどくなり,体を動かしだすと症状が楽になる炎症性腰背部痛を伴いやすい。
海外で頻度の高いHLA-B27陽性率は,わが国ではきわめて低く,陰性でも否定はできないが,陽性の場合は有用である。画像所見として仙腸関節の単純X線検査は,病初期には,その感度が低い。重度のAS患者の脊椎X線検査では,syndesmophytes(前縦靱帯の椎体付着部の靱帯骨棘)やbamboo spine(竹様脊椎)を伴った脊椎の強直がみられる。早期に診断を行うためには,仙腸関節の単純MRI検査(STIRとT1強調画像)も有用である。
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