IgA血管炎は,以前はヘノッホ・シェーンライン紫斑病と呼ばれていた。触知できる紫斑,関節症状,消化管症状,腎障害を四徴とする,免疫複合体性の小型血管炎である。皮膚症状が初発症状となることが多く,好発年齢は小児期であるが,成人に発症する場合もある。他の全身性血管炎とは異なり,自然に改善することが多いが,症状や罹患臓器に応じて薬物療法が必要となる。
小児では最も頻度の高い血管炎であり,紫斑,関節痛,腹痛,腎障害(血尿や蛋白尿)などの臨床症状で診断を行うが,成人では類似疾患との鑑別が必要であり,生検によるIgA沈着の証明が重要である。
血管炎に関する「チャペルヒルコンセンサス会議2012」において,ヘノッホ・シェーンライン紫斑病は,IgA血管炎に名称が変更となった。小型血管炎のうち免疫複合体性血管炎のひとつに分類されており,細小動脈~毛細血管を病変の主座とする全身性の血管炎である。全年齢層で発症するが,3~10歳に最も多く,男児がやや多い。発症は秋から冬に多く,上気道感染症が先行することがある。IgA血管炎の治療は,安静を保ち,症状に応じて対症的な治療を行うのが基本である。重症の紫斑,強い腹痛や下血などの消化管症状,糸球体腎炎または神経障害を伴う場合には,ステロイドや免疫抑制薬を使用する。
国内の診療ガイドラインでは,日本循環器学会から「血管炎症候群の診療ガイドライン(2017年改訂版)」1),日本皮膚科学会から「皮膚血管炎・血管障害診療ガイドライン2023」2),日本小児腎臓病学会から「小児IgA血管炎診療ガイドライン2023」3)が示されている。
IgA血管炎の予後は基本的に良好で,多くの場合(約80%),単相性の経過をたどり数週間で自然寛解する。死亡率は1%未満(腸穿孔や大量消化管出血)である。小児IgA血管炎では,腎炎を除くすべての症状は1カ月以内に寛解することが多い。成人IgA血管炎は腎炎を発症しやすく,かつ重症化する傾向が報告されている。
ステロイド(グルココルチコイド)は,軽症例で必要時に少量投与,重症例で大量投与となる。しかし,ステロイドには易感染性をはじめ生命の危機をもたらしうる副作用や,小児においては成長障害を引き起こす可能性があるため,適切な使用が求められる。
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