高安動脈炎は,大動脈およびその主要分枝動脈,肺動脈,冠動脈に生じる大血管炎で,若年のアジア人女性に多く発症する。「高安病」「大動脈炎症候群」として広く知られてきたが,2012年のチャペルヒルコンセンサス会議にて「高安動脈炎(Takayasu arthritis:TAK)」と統一され,わが国の指定難病の病名も「高安動脈炎」に変更,統一された。画像診断の進歩から早期診断が可能になり,治療薬にIL-6阻害薬のトシリズマブが認可されたことから,予後は改善傾向にある。
2017年に日本循環器学会が提唱した「血管炎症候群の診療ガイドライン」1)および2022年に米国および欧州リウマチ学会が提唱したTAK分類基準2)に準じ,臨床症状と画像所見をもとに,診断する。
初期症状は全身倦怠感,発熱などの全身症状で,その後は血管病変に起因する乏血・虚血症状を呈する。他覚的所見も含め最も多くみられるのが,上肢の症状で,上肢の易疲労感,しびれや冷感,血圧の左右差(10mmHg以上),脈の欠失などである。ついで,めまいや頭痛などの頭頸部症状を認める。血管拡張性病変としては,大動脈瘤,大動脈弁閉鎖不全症があり,予後に関わる。視力障害,若年性高血圧,上下肢の血圧差(「下肢が10~30mmHg高い」からはずれる),下腿の結節性紅斑なども当疾患を疑う所見である。
画像検査は,CT,MRI,エコー,PET-CTを用い,血管壁の肥厚および血管の狭窄・拡張部位を同定する。その際,動脈硬化症や感染性動脈瘤などの鑑別は重要である。
早期に血管の炎症を抑えるため,中等量以上の経口グルココルチコイド(glucocorticoid:GC)のほか,免疫抑制薬やトシリズマブを併用し,寛解導入を行う1)3)。視力障害や心血管性病変など,生命に関わる臓器障害を有する場合は重症と判断し,GC経口大量療法および点滴静注療法から開始する1)3)。上記抵抗例では,TNF阻害薬を考慮する1)3)。
寛解導入達成後は,少量のGCと1種類の免疫抑制薬あるいはトシリズマブにて,寛解維持療法を継続する1)3)。
また,脳・心血管病変がある場合は,抗血小板療法を併用する1)3)。血行再建術などの外科的治療の必要性は,血管外科医と協議し,決定する1)3)。
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