日本医療安全調査機構の医療事故調査・支援センターは3月19日、「医療事故の再発防止に向けた警鐘レポートNo.2」を公表した。造影剤などの血管内投与後にアナフィラキシーを発症して死亡した事例を詳細に分析し、再発防止策を検討。死亡回避のためには、投与後に初発症状が出現した時点で速やかに緊急コールやアドレナリン筋肉内注射などの対応を取る必要があると指摘した。
分析対象となったのは2018年以降にセンターに報告があった19の死亡症例。これらの症例の特徴をみると、原因となった注射剤の種類はヨード造影剤(8例)やβ-ラクタム系抗菌薬(6例)が多い。初発症状は瘙痒感、紅潮・発赤といった皮膚症状もみられるものの、苦しさや気分不快、咳嗽、嘔気など皮膚症状がないものが全体の約7割を占めた。
症状の進行が速い点も大きな特徴で、注射剤投与から初発症状が現れるまでの時間の中央値は2分、初発症状の発現から心停止までの時間の中央値は7分。投与直後に初発症状が現れた事例や、初発症状の出現直後に心停止に至った事例もあった。
分析結果を踏まえた再発防止策としてレポートは、注射剤投与後に初発症状(くしゃみ、苦しい、嘔気、気分不快、咽頭部などの違和感、瘙痒感、紅潮・発赤)が出現した時点で、皮膚症状がなくてもアナフィラキシーを疑い、直ちに緊急コールや大腿前外側部へのアドレナリン筋肉内注射を行うことを提言。
さらにアナフィラキシー対応の備えとして、(1)直ちに緊急コール・アドレナリン筋肉内注射ができるように緊急対応のプロトコールを作成し、周知・訓練する、(2)造影剤、抗菌薬、抗悪性腫瘍剤などを使用する場所にアドレナリンを配備する、(3)薬剤アレルギー情報を把握・共有する、(4)薬剤投与開始から5分間、観察する―などの取り組みを求めた。