□強皮症〔全身性硬化症(systemic sclerosis:SSc)〕は,全身の結合組織における膠原線維の増生を特徴とする原因不明の炎症性疾患で,皮膚硬化,臓器線維化,末梢血管障害,免疫異常を特徴とする。
□わが国の患者数は約2万人と推定され,男女比は1:12で,30~50歳代に好発する。
□皮膚硬化の範囲・程度により病型分類される。
□びまん皮膚硬化型(SSc with diffuse cutaneous involvement:dcSSc):皮膚硬化が肘を超えて広範囲に及ぶ。内臓障害も早期より認め,重度のことが多い。
□限局皮膚硬化型(SSc with limited cutaneous involvement:lcSSc):皮膚硬化が四肢末端に限局する(肘を超えない)。顔面の皮膚硬化はあってもよい。内臓病変は軽度であるが,胆汁性肝硬変症や肺高血圧症を併発する例もある。
□強皮症の最も特徴的な臨床症状で,四肢末端から始まり,左右対称に手背,前腕,上腕,躯幹へと拡大していく。
□特有の強皮症顔貌を呈する。
□手指は皮膚硬化のため屈曲拘縮を呈し,指の先細り,末節骨の吸収による指の短縮と爪の変形をきたす。
□レイノー現象は強皮症の90%以上に認め,ほかの症状に数年以上先行する例もある。
□指尖部にみられる虫喰い状の陥凹性瘢痕は強皮症に特徴的な変化であり,血管病変を示唆する。
□血管閉塞症状が強いと,指尖部や手指関節伸側の難治性皮膚潰瘍をきたす。
□多発関節痛,こわばり感を認める。時に慢性,持続性の多発関節炎を合併することがある。
□手指関節を屈曲・伸展させるときに腱鞘・滑膜病変による腱摩擦音(粗い皮をこするような感触)を認めることがある。
□上部~下部消化管の平滑筋層が萎縮し線維性組織による置換をきたし,運動機能が低下し拡張する。
□食道下部の蠕動減少・拡張と食道噴門接合部の障害により逆流性食道炎を合併し,胸焼け,嘔気・嘔吐,胸骨下部痛をきたす。
□小腸の拡張と蠕動低下によって腹部膨満,下痢と便秘を繰り返す。
□消化吸収能力が減退し,貧血,体重減少,低蛋白血症など様々な栄養障害を認める。
□50~70%に認める間質性肺炎は進行が緩徐(急性増悪は稀)であるが,進行すると労作時息切れ,乾性咳嗽を訴える。dcSScでは頻度が高く,慢性呼吸不全の原因となる。
□肺動脈性肺高血圧症,進行した肺線維症による二次性肺高血圧症がある。
□胸痛,労作時息切れを訴え,突然死の原因となる。
□心エコー検査でスクリーニングし,診断確定には右心カテーテル検査を要する。
□心筋組織,特に刺激伝導路の線維化によって房室ブロックや脚ブロックなどの伝導障害,不整脈を認める(強皮症心)。
□時に慢性の心嚢液貯留例がある。
□強皮症腎(腎クリーゼ)は腎小葉間動脈の閉塞によって生じる高レニン性悪性高血圧症と,急速に進行する腎不全をきたす病態である。
□かつては生命予後がきわめて不良であったが,ACE阻害薬の導入により予後が改善した。
□dcSScに併発し,特に皮膚硬化が急速に進行しつつある時期に突然発症することが多い。
□抗核抗体は90%以上に検出される。また,様々な強皮症特異的自己抗体が検出され,補助診断や病型分類に役立つ。
□強皮症の20~30%に検出され,dcSScに特異性が高く,間質性肺炎が高頻度かつ高度である。
□強皮症の20~30%に陽性。lcSScと関連し,重篤な臓器障害は少ない。
□約10%に陽性で,dcSScに特異的。腎クリーゼと関連する。
1190疾患を網羅した最新版
1252専門家による 私の治療 2021-22年度版 好評発売中
PDF版(本体7,000円+税)の詳細・ご購入は
➡コチラより