□多発性筋炎(polymyositis:PM)は,自己免疫により複数の骨格筋の炎症と破壊をきたす疾患で,体幹や四肢近位筋優位の筋力低下をまねく。特徴的皮膚症状も伴うものが,皮膚筋炎(dermatomyositis:DM)である。両疾患,特にDMは間質性肺炎や悪性腫瘍を伴いやすい。
□わが国の総患者数は2万人程度,男女比は1:3であり,発症は中年以降に多い。
□筋病理学的検討から,かつて,PMは細胞傷害性CD8 Tリンパ球により,DMはCD4 Tリンパ球異常がまねく自己抗体により惹起されるとされた。しかし,その分子生物学的証拠は希薄であり,中間的症候を呈する症例や治療反応性を考慮すると,PM/DMは単一のスペクトラムを形成すると考えられる。
□発熱,全身倦怠感,易疲労感,食欲不振,体重減少などをきたす。
□体幹,四肢近位筋群,頸筋,咽頭筋の筋力低下が緩徐に進行する。嚥下筋の筋力低下は,構音障害のみならず,誤嚥や窒息死の原因となる。筋痛を認めることもあり,進行例では筋萎縮をきたす。心筋炎は,不整脈,心電図異常や心不全の原因となる。
□特徴的皮疹として,上眼瞼の浮腫性紅斑(ヘリオトロープ疹),手指関節背側および肘頭,膝蓋,内果などの四肢関節背面の落屑を伴う角化性紅斑(Gottron徴候),特に手指の指節間関節や中手指節関節背側の丘疹(Gottron丘疹)などがある。
□間質性肺炎合併例では,乾性咳嗽,労作時呼吸困難をきたす。
□ほかのリウマチ性疾患同様に,多関節痛や多関節炎,レイノー現象などをきたす。
□筋破壊により血清筋原性酵素〔クレアチンキナーゼ(creatine kinase:CK),アルドラーゼ,乳酸脱水素酵素,AST,ALT〕やミオグロビンが高値となる。心筋病変のある場合には,CK-MBや心筋トロポニンが高値となる。
□末梢白血球数増多やCRP高値を認めることがある。血球貪食症候群合併例では汎血球減少や血清フェリチン高値を認める。間質性肺炎合併例でも血清フェリチン高値やKL-6高値を認める。
□抗Jo-1抗体を含む抗アミノアシルtRNA合成酵素ARS(aminoacyl tRNA synthetase)抗体,抗MDA5(melanoma differentiation-associated protein 5)抗体,抗Mi-2抗体,抗TIF1-γ(transcriptional intermediary factor 1-γ)抗体,抗シグナル認識粒子(signal recognition particle:SRP)抗体,抗HMGCR(3-hydroxy-3-methylglutaryl-coenzyme A reductase)抗体など多くの筋炎特異的自己抗体が見出されている。
□線維自発電位や陽性鋭波などの安静時活動を認め,随意収縮時には筋原性変化を認める。
□炎症による浮腫性変化は,T1強調画像で低信号,STIR画像で高信号を呈する。ガドリニウム造影は不要である。
□典型像では,非壊死筋線維を囲む単核球浸潤と筋線維の変性と中心核線維などの再生像とを認める。筋束周囲萎縮はDMに,より多く認められる。
□表皮基底層の液状変性,真皮血管周囲性の単核球浸潤,真皮ムチン沈着が特徴である。しかし,どの所見も特異的ではない。
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