□巨細胞性動脈炎(giant-cell arteritis:GCA)は,50歳以上の高齢者に発症する中~大動脈の動脈炎を主徴とする疾患である。
□男女比はほぼ1:1であり,欧米に多く,日本では比較的少ない。
□しばしば側頭動脈が障害されることから側頭動脈炎(temporal arteritis)と呼ばれていたが,本態は大動脈やその分枝の動脈炎であり,2012年に改訂された原発性血管炎の分類(CHCC2012においても,その病理所見をふまえた巨細胞性動脈炎という呼称が用いられている1)。
□障害される動脈の部位に基づく多彩な臨床症状に加え,発熱,倦怠感といった全身症状を認める。
□GCAの30~50%程度にリウマチ性多発筋痛症を合併するとされる。
□全身症状:発熱,体重減少,全身倦怠感など。
□頭部:浅側頭動脈の炎症により側頭部の拍動性頭痛(片側性が多く,夜間の増悪傾向あり)。診察上,側頭動脈の発赤,疼痛,索状肥厚を認める。
□視力障害:眼動脈の障害による虚血性視神経炎や網膜中心動脈閉塞による視力障害が臨床上最も重要である。多くは不可逆性で,10%程度で失明に至る。
□下顎跛行:食べ物を噛むことより頬部に疼痛,易疲労感を自覚する本疾患に特徴的な症状である。
□その他:内頸動脈や椎骨動脈の障害による難聴,めまい,一過性脳虚血発作,脳梗塞など。
□リウマチ性多発筋痛症(30~50%程度に合併):四肢近位部の疼痛や,朝のこわばりが特徴的である。
□血液検査:赤血球沈降速度亢進,CRP高値など(特異的指標に乏しく,自己抗体は陰性)。
□眼底検査:視神経乳頭の虚血性変化,網膜の綿花様白斑,小出血など。
□画像検査:超音波検査では,側頭動脈周囲に低エコーの同心性血管壁肥厚(halo)を検出しうる。CT・MRI・FDG-PETでは,大血管病変の描出が可能である。血管造影では,罹患動脈の閉塞・狭窄を認める。
□側頭動脈生検:巨細胞性動脈炎の病理像(リンパ球,マクロファージとともに多核巨細胞の浸潤を特徴とした全層性動脈炎)。
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