□金属は日常生活のあらゆる所で用いられており,接触する機会が多い。また,生体活動にとって重要な必須微量金属として,食物などから摂取する必要がある。
□金属に対する感作経路は皮膚からのことが多く,原因金属がイオン化して表皮内に侵入した場合はランゲルハンス細胞が,真皮内に侵入した場合は樹状細胞が捕獲し,体内の蛋白質と結合して完全抗原となり,所属リンパ節でヘルパーT細胞に抗原情報が伝達され,感作が成立する。
□原因となる金属は,わが国ではニッケル,コバルト,クロム,金が多く,パラジウムなどの歯科金属によることもある。
□病型は,アレルギー性接触皮膚炎などの局所症状として発症する場合と,掌蹠膿疱症,異汗性湿疹,痒疹,紅皮症などの全身型のアレルギーとして発症する場合とに大別される。
□日常品に含まれる金属は表1の通りであるが,思わぬものに含まれていることがある1)2)。
□ニッケルやコバルト,クロムは一般の金属製品に含有されていることが多い。特にニッケルは,ネックレスの留め金やジーンズのボタン,バックル,聴診器の耳管(バイノーラル),ピアス,イヤリングなどのほか,セメントなどにも含まれており,難治性の職業性手湿疹をきたすことがある。また,クロムは革バンドをなめすのに使用されるため,革アレルギーと誤認識されることが多い。
□金は化学反応を起こしにくい金属であるが,ピアスなど皮膚に埋め込まれた状態では汗により溶出し,接触皮膚炎の原因となる。逆に義歯や刺し歯に含まれる金が口内炎の原因と疑われることがあるが,アレルギーではなく義歯そのものの機械的接触による刺激症状のことが多い。
□アレルギー性接触皮膚炎:金属装飾具などとの接触により,接触部位を中心にかゆみを伴う紅斑・丘疹・小水疱を生じる。発汗の多い夏期に好発する。
□自家感作性皮膚炎:接触皮膚炎の症状が強い場合,接触皮膚炎に続発してかゆみを伴う紅斑・丘疹・小水疱が全身に散在して出現することがある。
□パッチテストの信頼性が高い。パッチテスト試薬金属(鳥居薬品など)をパッチテスト用テープのリント布にごく少量滴下し,肩甲部または上腕屈側に密封貼布し,48時間後に剥離して紅斑・丘疹・小水疱などの皮疹の有無を判定し,さらに貼布72時間後,1週間後にも判定する。
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