□胸椎椎間板ヘルニアの発生は,頸椎,腰椎に比較すると稀であり,年間100万人に1人の割合である。また,手術を要する椎間板ヘルニアの約0.15~1.8%を占める。
□胸椎は,T1~T10では胸郭で固定され,生体力学的に安定している。T10/11,T11/12,T12/L1では可動域が比較的大きく,本症の約75%はT8より下位に生じる。
□明らかな性差はなく,20~40歳代に多い1)。
□初発症状は下肢の脱力・しびれが多く,進行すると膀胱直腸障害を伴う。頸椎疾患,腰椎疾患と誤診されることもある。Stillermanら2)による71例の報告では,局所疼痛・軸性疼痛・神経根性疼痛76%,運動障害を伴う胸部脊髄症61%,膀胱障害24%であった。
□T1/2のヘルニアでは胸部脊髄症のほか,T1神経根障害(胸部,上肢内側~環指,小指にかけての痛み,しびれ,骨間筋麻痺),Horner症候群(縮瞳,眼瞼下垂,眼裂狭小,発汗低下)を伴うこともある3)。
□稀に胸痛,腹痛により循環器疾患,消化器疾患が疑われることがある。
□脊髄円錐上部はおおよそT12高位,脊髄円錐部はL1高位であるが,この部位のヘルニアでは多彩な症状を呈する。
□X線:単純X線では椎間高の狭小化,椎体縁の骨棘形成,椎間関節の肥厚,局所後弯,靱帯骨化などがみられるが,明らかでないことも多い。そのため,胸椎病変が疑われた場合,積極的にMRI撮影をする必要がある。
□CT:単純CTおよび脊髄造影後CTは,hard disc*1,soft disc*2の鑑別,ヘルニアの石灰化,靱帯骨化の有無の評価が可能で,手術術式を決定する上で必須である。
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