□膝関節周囲には主たる靱帯組織として内側側副靱帯(medial collateral ligament:MCL),前十字靱帯(anterior cruciate ligament:ACL),後十字靱帯(posterior cruciate ligament:PCL)損傷,後外側支持機構(posterolateral structures:PLS)が存在し,これらの靱帯組織損傷の受傷機序,治癒過程,治療法はそれぞれ異なることより,各靱帯損傷の特徴を把握しておくことが重要である。
□MCL損傷は膝外反や下腿外旋などの強制により生じる。新鮮損傷例では膝内側の疼痛や可動域制限が主訴であるが,症状の程度と損傷の重傷度は必ずしも一致せず,比較的軽度の損傷でも疼痛や腫脹が強い場合がある。
□ACL損傷を合併していない例では関節血症は認められても軽度である。
□ジャンプ後の着地動作やランニング中の急停止や方向転換などによる非接触型の損傷が特徴的である。受傷時,膝の中で何かが切れた感じ(pop音)を自覚していることが多く,スポーツ動作の続行は不能となる。
□受傷後数時間にて膝の腫脹が著明となり,血性穿刺液を認めた際は本損傷を疑う。
□膝関節屈曲位にて膝前面が地面に付くなどの,後方外力が下腿に加わることにより生じることが多い。
□スポーツ外傷ではラグビー,野球捕手の衝突などが多く,交通事故でも生じる。
□スポーツや日常生活において不安定性による機能障害はACL損傷に比べ少ないことが多い。
□PLSは外側側副靱帯,膝窩筋腱,膝窩腓骨靱帯および弓状靱帯などからなる膝関節後外側部における靱帯組織の総称であり,単独損傷は比較的稀である。
□PCL損傷合併損傷例ではPLS合併は成績不良因子となるため,合併の評価が重要である。
□身体所見では30°屈曲位での外反ストレステストが陽性となる。膝伸展位で陽性の場合は前または後十字靱帯損傷の合併を考える。
□ストレスX線撮影は不安定性の定量化に用いられ,単純X線像およびCTにより靱帯付着部の剥離骨折の有無を確認する。
□MRIは半月板および前十字靱帯における合併損傷の有無の確認に有用である。
□身体所見ではLachmanテストは最も信頼性が高い徒手検査である。pivot shiftテストおよびNテストはACL不全によるgiving wayを再現し,ACL機能を評価するのに有用であるが,急性期には筋性防御のために検査が困難なことが多い。
□単純X線撮影にて剥離骨折(脛骨顆間隆起骨折)の有無やSegond骨折(外側関節包の脛骨付着部の剥離骨折)の合併を確認する。
□MRIは半月板および骨挫傷における合併の有無の把握に有用である。
□身体所見では膝屈曲位90°にて脛骨粗面が後方に落ち込む徴候(sagging)は,特に陳旧例で明確となる。膝90°屈曲位での後方引き出しテストで陽性となる。
□単純X線撮影にて脛骨付着部での剥離骨折の有無を確認する。
□MRIではPCLは良好に描出されるため,診断価値は高い。
□内反動揺性の診断には膝屈曲20°位における内反ストレステストが診断に有用であり,後外側回旋不安定性の評価には脛骨外旋テスト(dial test)が用いられている。脛骨外旋テストが膝30°屈曲位に加え,90° 屈曲位においても陽性の場合,後十字靱帯不全も合併している可能性が高い。
□単純X線撮影では腓骨頭での剥離骨折の有無などを確認する。
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