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溶血性連鎖球菌感染症

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  • ■治療の考え方

    症状改善および伝播防止には抗菌薬投与が有効である。

    合併症予防にも,抗菌薬投与は有効であると考えられている。

    ■治療上の一般的注意&禁忌

    【注意】

    治療は一般的に抗菌薬の経口投与を行う。これまで分離された溶血性連鎖球菌にβ-ラクタム系抗菌薬に耐性の株がないので,ペニシリン系またはセフェム系抗菌薬の使用が基本となる。

    ペニシリンアレルギーの児には,マクロライド系抗菌薬を投与する。また,その約15%はセフェム系抗菌薬にもアレルギーを有するため,注意する。ただし,わが国ではマクロライド系抗菌薬耐性率が急増しており(図21),注意が必要である。

    22_11_溶血性連鎖球菌感染症

    ■典型的治療

    ペニシリン系抗菌薬内服10日間と,セフェム系抗菌薬内服5日間の有効性は同等2)と考えられている。セフェム系抗菌薬は,セフジトレンピボキシルのほか,セフジニル,セフカペンピボキシル,セフテラムピボキシルを用いてもよい。いずれも通常投与量を分3,5日間投与する。

    ペニシリン系抗菌薬に無効の場合にはβ-ラクタマーゼ産生菌の共存が考えられ,セフェム系抗菌薬に変更するか,またはβ-ラクタマーゼ阻害薬の合剤を使用する。

    一手目:バイシリン®G顆粒40万単位(ベンジルペニシリン)5万単位/kg/日 分3~4(10日間),またはワイドシリン®細粒20%(アモキシシリン)30~50mg/kg/日 分2~3(10日間),またはメイアクトMS®小児用細粒10%(セフジトレンピボキシル)9mg/kg/日 分3(5日間)

    二手目:〈処方変更〉クラバモックス®小児用配合ドライシロップ(クラブラン酸/アモキシシリン)96.4mg/kg/日 分2(10日間)

    ■合併症への対応

    最も重症な病型である劇症型溶血性連鎖球菌感染症,続発症の溶連菌感染後急性糸球体腎炎とリウマチ熱への対応が重要である。

    劇症型溶血性連鎖球菌感染症は突発的に発症し,急速に多臓器不全に進行する致死率の高い疾患である。敗血症性ショック病態を呈し,血液,脳脊髄液など通常無菌的な部位,生検組織,壊死軟部組織などから菌が分離される。全数報告対象の5類感染症で,診断した医師は7日以内に保健所への届け出が必要である。

    溶連菌感染後急性糸球体腎炎は血尿,高血圧,浮腫が主症状で,咽頭・扁桃炎の1~2週後,皮膚炎の3~6週後に発症する。予後良好で慢性化率は2%未満である。

    リウマチ熱は咽頭・扁桃炎の2~4週後に,心炎,多関節炎,皮下結節,舞踏病,輪状紅斑を主症状として発症する。発症機序としては,産生された菌体成分に対する抗体と,心筋,関節,皮膚,中枢神経細胞などとの交差免疫反応による臓器障害が考えられる。また,遺伝的素因の関与も示唆されている。近年,わが国をはじめ先進国での発生が激減している。

    ■非典型例への対応

    わが国における無症状小児からの溶血性連鎖球菌分離率は数~10%程度である。通常は治療の対象とならないが,①溶連菌感染後急性糸球体腎炎やリウマチ熱の多発,②身近な地域で溶血性連鎖球菌感染症の流行,③リウマチ熱の家族歴あり,④家族が治療実施にもかかわらず溶血性連鎖球菌感染症に反復罹患,⑤保菌に対する不安から保護者が口蓋扁桃摘出を考慮している,などの場合には抗菌薬投与による除菌を検討する。

    ■高齢者への対応

    溶血性連鎖球菌感染症は小児期の咽頭・扁桃炎が中心であるが,免疫力の低下する高齢者では重症化しやすく,致命的となる場合も少なくない。特に,高齢者で多くなる劇症型溶血性連鎖球菌感染症には注意が必要である。

    ■ケアおよび在宅でのポイント

    抗菌薬服用を遵守する。

    患者と接触後には,うがいと手洗いを行う。

    第三種学校感染症に定められており,抗菌薬投与開始後24時間を経て全身状態が良ければ登校は可能である。

    ■文献・参考資料

    【文献】

    1) 舟橋恵二, 他:医学検査. 2016;65(2):229-34.

    2) Ozaki T, et al:J Infect Chemother. 2008;14(3): 213-8.

    【参考】

    ▶ 小児呼吸器感染症診療ガイドライン作成委員会:小児呼吸器感染症診療ガイドライン2011. 尾内一信, 他, 監. 協和企画, 2011.

    ▶ 佐久間孝久:小児咽頭所見アトラスさくま. 第1版. メディカル情報センター, 2005.

    【執筆者】 尾崎隆男(江南厚生病院こども医療センター顧問)

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