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急性灰白髄炎(ポリオ)

登録日:
2017-03-16
最終更新日:
2017-03-29
岩田 敏 (慶應義塾大学医学部感染症学教室教授)
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  • ■疾患メモ

    急性灰白髄炎〔acute poliomyelitis,ポリオ(polio)〕は,ピコルナウイルス科・エンテロウイルス属のポリオウイルスの感染により起きる四肢の急性弛緩性麻痺(acute flaccid paralysis:AFP)を典型的な症状とする疾患である。

    原因となるポリオウイルス1~3型には,地域集団において継続的に伝播している野生株ポリオウイルス,ワクチン由来ポリオウイルス*1およびワクチン株ポリオウイルス*2がある。

    野生株ポリオウイルスによるポリオのほか,生ワクチン接種後にワクチン関連麻痺性灰白髄炎(vaccine associated paralytic poliomyelitis:VAPP)を起こすことがある。

    ポリオワクチンによる予防が重要である。

    *1:親株である生ポリオワクチン株のVP-1領域に一定以上の変異がある株

    *2:野生株ポリオウイルス,ワクチン由来ポリオウイルス以外のポリオウイルス

    ■代表的症状・検査所見

    【症状】

    感染者の多くは不顕性感染である。

    不全型,非麻痺型での潜伏期間は3~6日,麻痺型での麻痺を発症するまでの潜伏期間は通常7~21日である。

    〈不全型〉

    感染者の約5%(4~8%)でみられ,発熱,頭痛,咽頭痛,悪心,嘔吐などの感冒様症状のみが認められる。

    〈非麻痺型〉

    感染者の1~2%でみられ,上記の症状に引き続き髄膜刺激症状が認められる(無菌性髄膜炎)。

    〈麻痺型〉

    感染者の0.1~2%でみられ,不全型でみられるような前駆症状の後,突然四肢の非対称性急性弛緩性麻痺が出現する。

    麻痺は脊髄型で下肢に多くみられる。

    罹患部位の腱反射は減弱ないし消失し,知覚感覚異常を伴わない。

    延髄が侵されると球麻痺を合併して嚥下,発語,呼吸が障害される。

    発症から12カ月を過ぎても麻痺あるいは筋力低下が残る症例では,永続的な後遺症として運動神経障害による麻痺を残す可能性が高い。

    【検査所見】

    本疾患を疑った場合は,診断のための検体(糞便,直腸拭い液,咽頭拭い液,血液,髄液など)を採取,保存しておき,後日地方衛生研究所,国立感染症研究所等に検査を依頼する。

    〈髄液検査〉

    単核球優位の細胞数増多,蛋白増加がみられる。

    〈ウイルス分離〉

    糞便,直腸拭い液,咽頭拭い液から,細胞培養によるポリオウイルスの分離,RT-PCR法によるウイルスRNAの検出が可能である。

    髄液からのウイルス検出も可能であるが,検出率は低い。

    生ポリオワクチン接種が行われている地域では,検出されたウイルスが野生株なのかワクチン由来株なのかワクチン株なのかについて鑑別する必要がある。

    〈その他〉

    血清中和抗体による血清学的診断も可能であるが,ワクチンによる集団免疫率が高いため,判定が困難な場合が多い。

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