□乳児股関節脱臼は,1970年代初めからの予防活動や少子化などにより発生頻度は1/10に低下し,1000人に1~3人となり次第に関心も薄れていった。しかし近年,歩行開始後に診断され治療に難渋する例が全国で年間100例程度報告され,予防啓発活動と健診体制の再構築が急務となっている。
□特に女児は関節が柔らかく,男女比は1:5~9と女児に多い。
□乳児股関節脱臼は,向き癖により体幹が捻れ,向き癖反対側にみられることが多い股関節開排制限や,オムツの当て方,抱き方などの後天的要因が加わって発生する。
□生後1~2カ月児の股関節は構造上未熟であり,女性ホルモンの影響もあり不安定な状況で,股関節や膝関節の伸展や下肢の非対称肢位(立て膝)などにより股内転筋が短縮し開排制限が生じると,臼蓋形成不全から脱臼へと進展しやすい。
□早期発見:乳児期初期に仰臥位でM字型開脚になっていることを確認し,向き癖反対側の下肢が立て膝の状態や非対称肢位を呈している場合は,開排制限と鼠径皮膚溝の非対称をチェックする必要がある(図1)。
□一次健診でのスクリーニング(二次検診紹介率):開排制限のみでスクリーニングすると,二次検診紹介率は2~3%と少ない。しかし,オーストリアやドイツなどは健診に超音波検査を導入しており,全例超音波検査でスクリーニングした結果は国内外ともに約6%が二次検診紹介となっている。
□日本整形外科学会が作成した「乳児股関節健診の推奨項目と二次検診への紹介」では,開排制限があれば紹介となり,その他,大腿皮膚溝または鼠径皮膚溝の非対称,家族歴,女児,骨盤位のうち,2項目以上あれば二次検診に紹介することを勧めている。このスクリーニングを用いると10~15%が紹介となるが,決して多すぎる数字ではない。健診体制を再構築して紹介数の増加に対応できる整形外科医の体制も整える必要がある。二次検診紹介例を減少させ見逃し例をなくすために,超音波検査を用いたスクリーニングの普及が期待される。
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