監修・編集: | 松尾 汎(医療法人松尾クリニック 理事長) |
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編集: | 長束一行(国立循環器病研究センター 臨床検査部 部長) |
編集: | 濵口浩敏(北播磨総合医療センター 脳神経内科 部長) |
判型: | AB判 |
頁数: | 208頁 |
装丁: | カラー |
発行日: | 2018年05月03日 |
ISBN: | 978-4-7849-4024-0 |
版数: | 新装改訂 |
付録: | - |
Chapter 1.生活習慣病と動脈硬化
1 生活習慣病一般
2 頸動脈エコー実施の役割
Chapter 2.頸動脈の病理
頸動脈の病理
Chapter 3.頸動脈エコーの検査手技
1 頸動脈エコーの準備
2 頸動脈エコーの手技
3 頸動脈エコーの評価
4 頸動脈エコーの診断
5 stiffness parameterβの計測
6 狭窄とその計測
7 頸動脈血流速度の計測
8 椎骨動脈の描出
Chapter 4.頸動脈病変の意義
1 頸動脈肥厚度の意義(概論)
2 プラークの分類と意義
3 stiffness parameterβの意義
4 狭窄の意義─エコーの役割
5 頸動脈血流波形解析の意義
6 頸動脈肥厚度計測
7 IMTと内科的治療
8 頸動脈の外科治療 治療の効果1 ─ 血管内治療法 CAS
9 頸動脈の外科治療 治療の効果2 ─ 血行再建術 CEA
10 実地医家からみた頸動脈検査の進め方
Chapter 5.練習問題
1 頸動脈肥厚度計測に関して
2 プラーク病変の診断と分類
Chapter 6.資料
機器・ソフトウェア紹介
1 GEヘルスケア・ジャパン(株) LOGIQ E9 XDclear 2.0,LOGIQ S8 FS
2 コニカミノルタ(株) SONIMAGE HS1
3 (株)ソフトメディカル IntimaScope
4 キヤノンメディカルシステムズ(株) 超音波診断装置の高周波画像表示と血流観察機能
5 (株)日立製作所 LISENDO 880
6 フクダ電子(株) 超音波画像診断装置 UF-760AG+(PaoLus+)
超音波による頸動脈病変の標準的評価法─新旧対比表(抜粋)
序 文
生活習慣病とは「動脈硬化の危険因子」とされる高血圧,糖尿病,脂質異常症,喫
煙などで,それらによって生じた全身の動脈硬化性疾患(脳梗塞,心筋梗塞,慢性腎
臓病,閉塞性動脈硬化症など)も含めて,その診療への関心が高まっている。生活習
慣病のコントロールや循環障害の再灌流療法が重要であることは勿論であるが, 近
年は低侵襲的な診断法の進歩によって, 動脈硬化の進展過程を詳細に観察できるよ
うになり,「動脈硬化の早期診断」も診療に役立てられるようになった。
動脈硬化の評価には, 動脈硬化によって生じた, ① 拡張能の低下や硬さを評価す
る「機能診断」と,②壁肥厚や内腔の狭窄・瘤形成などを評価する「形態診断」がある。
その中で超音波検査(エコー検査)は無侵襲かつreal timeに画像と機能の両方を評価
できる検査法として動脈硬化の評価に活用され, 特に頸動脈エコーは簡単に動脈硬
化の進展程度を知る指標が得られることから汎用されている。
頸動脈エコーでは,「内膜・中膜複合体厚」(IMT)の肥厚程度, さらにプラーク
形成, 動脈狭窄, 閉塞へと進行する状態を詳細に評価することができる。さらに,
2017年度は日本超音波医学会と日本脳神経超音波学会が,共同で頸動脈エコーの検
査法および評価指標の標準化を行った。本書ではその標準化を受けて,IMTと生活
習慣病との関連, 要注意プラークの意義, 狭窄の評価法などについて詳細に述べら
れている。
しかし,降圧薬や脂質改善薬などの薬物治療によるIMT肥厚の進展抑制は報告が
あるが,それとイベント抑制との関連はいまだ不明である。プラークも「再発の危険
性」は指摘されたが,初発との関連などを含め詳細はいまだ確定していない。またエ
コーでの狭窄評価にドプラ法の応用が勧められているが, 臨床への応用を経たさら
なる検証が必要である。
今回の標準化により,ようやく山積している課題や命題を解明・検証していく出発
点に到達したと言えよう。今後, 標準化された手法を用いて得られた「標準的指標」
によって動脈硬化の進展を評価することにより,頸動脈エコーが「動脈硬化性疾患の
診療」に寄与することを期待している。
2018年春
医療法人松尾クリニック理事長
松尾 汎