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病態・検査・診断・治療 診療所で診る足

整形外科医Dr.Inokuchiが贈る,プライマリ・ケア医のための足診療テキスト

定価:4,730円
(本体4,300円+税)

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著: 井口 傑
判型: A5判
頁数: 224頁
装丁: 2色刷
発行日: 2019年10月04日
ISBN: 978-4-7849-4855-0
版数: 第1版
付録: 無料の電子版が付属(巻末のシリアルコードを登録すると、本書の全ページを閲覧できます)

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──「足が痛い」「足が疲れる」「足がむくむ」…
プライマリ・ケア医の外来では、足の異常を訴える患者さんが多くいます。つまり、最初に患者さんに接する診療所や病院の一般医の先生方こそが足病変を見出し、足症状を全身疾患に結びつけ、全人的医療を行いうる立場にいるのです。
本書はあのDr.Inokuchiが満を持して贈る、プライマリ・ケア医のための足診療テキスト。専門医に回す前に、目の前の患者さんにできる検査・できる診断・できる治療を行うためのノウハウを惜しげもなく開陳しています。専門医に紹介するのはそれからでも遅くありません。

診療科: 整形外科 整形外科

目次

Ⅰ 足を診るということ
1 足に症状が多い3つの理由
2 足下から見える体と心
3 診療所で診る足
4 足の診方

Ⅱ 診療所での足の診断
1 症状から診断に至る道
2 足病変の原因による分類
3 靴の障害
4 スポーツの障害
5 精神障害および老化
6 診療所での治療
7 診療所でよりよく足を治すために
8 足を知る
9 実際の診療に際して

Ⅲ 診療所で遭遇する足の疾患
■1. 足の怪我と病気
1 外反母趾
2 強剛母趾
3 母趾種子骨障害
4 中足骨骨頭部痛(モートン病)
5 モートン(偽)神経腫
6 モートン趾
7 槌趾(ハンマー・トウ,マレット・トウ)
8 内反小趾
9 カーリー変形
10 趾節癒合症
11 陥入爪
12 巻き爪
13 爪下血腫(黒爪)
14 趾骨骨折
15 浮き趾
16 扁平足
17 変形性足根間関節症
18 踵骨棘,足底腱膜(付着部)炎
19 開張足
20 第5中足骨基部骨折(下駄骨折,ジョーンズ骨折)
21 中足骨疲労骨折(マーチ骨折)
22 有痛性外脛骨
23 踵部脂肪褥炎(踵脂肪体萎縮)
24 アキレス腱(付着部,周囲)炎
25 変形性足関節症
26 足関節骨軟骨障害
27 後脛骨筋腱機能不全(PTTD)
28 捻挫と打撲
29 足関節外側靱帯損傷(急性,陳旧性)
30 足根管症候群
31 先天性足根骨癒合症
32 アキレス腱断裂
33 下腿筋膜裂傷
34 シン・スプリント
35 脛骨疲労骨折
36 コンパートメント症候群
37 下腿静脈瘤
38 下腿浮腫
■2. 足に症状を起こす足以外の病気
1 中枢神経障害(脳血管障害,頸部脊髄症,脊髄損傷)
2 脳性小児麻痺
3 末梢神経障害
4 大腿動脈ASO(閉塞性動脈硬化症)
5 膝関節による足の痛み
■3. 足に症状を起こす全身性疾患
1 関節リウマチ
2 糖尿病の足(糖尿病足,シャルコー関節)
3 痛風

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序文

最前線の外来に来る患者には,「足が痛い」,「足が疲れる」,「足がむくむ」など,足に関する訴えが多い。最初に患者に接する,診療所や病院の一般医こそが足病変を見出し,足症状を全身疾患に結びつけ, 全人的医療を行いうる立場にいる。だから「足は特殊だ」と専門医に回す前に,目の前の患者に,できる検査,できる診断,できる治療を行い,その上で精査や手術が必要ならば,専門医に紹介すればよい。
著者が下町の整形外科病院を受け継いでから,かれこれ半世紀になる。その後,事情があって病院を手放し,総合病院の医長から,大学の教職で定年を迎えるまで,足から始まって足に終わった医者人生と言える。幸いにして,大した災害にも遭わずに一生を過ごしてきたが, 災害地で医療活躍する若い医師たちの口から,「CTどころか,X線写真も撮れないから,骨折の治療さえできない」という悲鳴を聞いて,心が痛んだ。
戦後間もなく,貧しい田舎で結核医として開業した父が,借金してやっとレントゲンを買った。暗室から出て来て, 濡れたレントゲン・フィルムを窓にかざしながら,「これが結核だぞ。わかるか」と指差した,誇らしげな父の顔は,今でも忘れない。最近のCT,MRI,エコーなど,診断器機の進歩は目を見張るものがあり,インスタグラムやYouTubeを持ち出すまでもなく, そのイメージの持つ説得力は,医者ばかりでなく,患者にとってもまさに福音である。
しかし,一歩止まって考えてみよう。災害で電気,水道が止まったら, 骨折患者に何もできないのか? CTやMRIのない診療所では,まともな医療ができないのか? 診療科の数だけ,臓器の数だけ専門医がいなければ,無医村なのか?
たった半世紀前には,CTがなくても硬膜外血腫を診断し,脳外科医がいなくても患者を助けられていた。スマホにパソコン,インターネットと,どこにいても世界とつながり,情報が得られる今の世の中で,半世紀昔の真似をしろとは言わない。しかし一生懸命考えて,自己のベストを尽くしていけば,頭のてっぺんから足の先まで,何もできない専門分野などありはしない。
どうせ神の手を持つ専門医でも, 半世紀前には医学生でさえなかった。だから,卒業したての医者にだって,患者に直接向き合えば,何かできることがあるはずである。遠い専門医より,近くの一般医である。
半世紀,足で始まり足で終わった医者人生だったが,直立二足歩行をする人間の足ほど面白いものはなかった。足の専門医制度さえできそうな勢いだが,足を診るのに専門はいらない。舐めてみろとは言わないが,五感を研ぎ澄まし,「なぜか」「なぜか」と考えていけば,おのずと足下から全身が見えてくる。足は,専門外だ,関係ないと思っている人たちにこそ,「たかが足, されど足」の世界を覗いて頂きたい。きっと,自分の興味とつながる,何かが見えてくるに違いない。

令和元年9月
井口 傑

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レビュー

足のスペシャリストによる渾身の一冊

仁木久照(聖マリアンナ医科大学整形外科学講座主任教授)
著者の井口傑氏は、慶応義塾大学医学部を卒業後、同大学で整形外科を専攻し、長年「足」の治療にかかわってこられた日本を代表する「足」のスペシャリストである。教授退任後の現在は診療所で診察する機会も多い。本書は、まさしく井口氏の足の外科医としての経験と知見の結集と言える渾身の一冊である。
本書は三部で構成されている。第一部「足を診るということ」では、歩かせてみる、全身疾患を見逃さない、などプライマリ・ケア医が足を診る時の基本をおさえている。第二部「診療所での足の診断」では、診療所で足を診る時の心構えを説いている。中でも『患者の求めるものを知り、欲するものを与えることが一番である。(中略)目の前の患者が満足してくれれば勝ち、不満を残せば負けの真剣勝負である』や『診療所で成功する秘訣は「手当」である。文字通り、手を当てて触って、なで回してほしい』は奥義を極めた井口氏のいわば格言と言える。第三部「診療所で遭遇する足の疾患」では各疾患の診断と治療のコツと盲点が紹介されている。失敗談も隠さず親近感を覚え、とても読みやすい。
本書を読み終えまず感じたのは、「足」の診療に対するハードルを下げるために様々な工夫を随所に散りばめた井口氏の本書への思い入れと「足」への永遠の情熱である。『足を診るのに道具はいらない。舐めてみろとは言わないが五感を研ぎ澄まし「なぜか」「なぜか」と考え、見て触って押して動かしてみれば、おおよそ診断がつく』。井口氏らしい表現で、実に的を射ている。著者が「足」を愛し、世の中の「足」についての誤った認識を正し困った患者さんを減らしたい気持ちの表れと私は理解した。
勤務医、コメディカルはもちろん、足で困っている・足に興味がある一般の方にも肩肘をはらずに読破できるお薦めの一冊だ。電子版付で無料閲覧も可能で、タブレット端末を使えば日常診療でもすぐ役立つ。外来診療のお供に是非本書を!

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