編著: | 山本悌司(総合南東北病院 神経科学研究所長) |
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判型: | B5判 |
頁数: | 256頁 |
装丁: | 口絵カラー |
発行日: | 2021年02月11日 |
ISBN: | 978-4-7849-5995-2 |
版数: | 第1版 |
付録: | 無料の電子版が付属(巻末のシリアルコードを登録すると、本書の全ページを閲覧できます) |
第Ⅰ章頭痛の発生源とその病態
1 頭痛の原因と国際分類
2 頭痛の診察
第Ⅱ章危険な頭痛
1 頭蓋内病変
1 頭蓋内占拠性病変
2 頭蓋内炎症
3 頭蓋内出血(くも膜下出血,脳内出血,硬膜下出血)
4 頭蓋内動脈解離と可逆性脳血管攣縮症候群
5 頭部外傷による頭痛
6 トロサ・ハント症候群(有痛性眼筋麻痺)
2 頭蓋近傍病変
1 眼科疾患の頭痛・眼痛
2 副鼻腔疾患と頭痛
3 側頭動脈炎(巨細胞性動脈炎)
4 頸椎疾患と頭痛
5 脳脊髄液漏出症(低髄液圧症候群)
6 雷鳴様頭痛
第Ⅲ章困る頭痛
1 片頭痛とその多様性
1 片頭痛の病態
2 片頭痛の診断過程
3 片頭痛の急性期治療と予防
2 三叉神経・自律神経性頭痛
1 三叉神経・自律神経性頭痛(TACs)
2 顔面痛
3 緊張性頭痛
4 その他の一次性頭痛
1 一次性穿刺様頭痛
2 寒冷による頭痛,咳嗽性頭痛,性行為関連頭痛
3 薬物乱用頭痛と薬物離脱性頭痛
4 ホメオスターシス障害と頭痛
5 身体化障害・精神病関連頭痛
第Ⅳ章頭痛に併存する問題
1 女性の頭痛
2 小児・若年者の頭痛
演習問題
付 録 国際頭痛分類(第3版日本語版)による頭痛の分類221
救急外来受診者の中で,約5%程度が頭痛を主訴にする。その半数以上は,片頭痛,緊張型頭痛などの一次性頭痛であるが,残りの半数は何らかの頭蓋内,頭蓋近傍の原因,あるいは身体的な原因を有する二次性頭痛であり,くも膜下出血が8%程度を占める。二次性頭痛には,そのほかにも診断が遅れると死につながりかねない疾患が数多くある。本書は,総合南東北病院に勤務する,あるいは勤務していた私の信頼する脳神経内科,脳神経外科,整形外科,麻酔科,眼科,耳鼻咽喉科の諸氏に全面的に協力していただき,分担執筆をお願いした。本病院は,毎週100件以上の救急車が来る活発な急性期病院である。ここで遭遇する頭痛疾患は多岐にわたるが,その多くの診断と対処は「ありふれた頭痛」として大過なく過ぎる。しかし,中には「まさか?」と思う原因が隠されている場合や,一刻の猶予もままならない疾患に遭遇することもある。
本書を編集しながら,随分以前に読んだ本の内容をおぼろげに思い出した*。米国疾病予防管理センター(CDC)の活躍の興味深いエピソードをいくつかまとめているが,「広野で,深夜遠くから多数の蹄の音が聞こえ,だんだん近づいてきた。また馬の大群か,と気にも止めずにいた」。「しかし,馬の大群の中に1~2頭のシマウマが紛れていたことを誰が想像しただろうか」と述べている。多い疾患を考えるのは当然であるが,その中に重要な稀な疾患も紛れ込んでいることを見出すことも医師の使命である。
本書の主眼は,二次性頭痛の中でも「危険な頭痛」を,比較的稀な症例も含めて解説するとともに,「困った慢性頭痛」に代表される一次性頭痛の病態,診断,治療を十分にカバーしたつもりである。また,脳神経疾患ではCT,MRIなどの画像の評価が非常に重要なので,それらを多用するように心がけた。本書は研鑽中の医師ばかりでなく,日々診療に多忙な医師のお役に立てれば幸いである。
本書編集の機会を頂いた日本医事新報社 磯辺栄吉郎氏と松本小夜子氏に深謝する。