編著: | 林 聖也(福島県立医科大学 会津医療センター 総合内科) |
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監修: | 山中克郎(福島県立医科大学 会津医療センター 総合内科 教授) |
判型: | B5変型判 |
頁数: | 192頁 |
装丁: | 単色部分カラー |
発行日: | 2022年03月25日 |
ISBN: | 978-4-7849-6347-8 |
版数: | 1 |
付録: | - |
CASE01 そんなにめずらしい熱なの?
CASE02 本当に風邪なの?
CASE03 こんなに若くてうつ病に!?
CASE04 ストレスと抑うつで熱が続くものなの?
CASE05 10歳代女児の遷延する発熱
CASE06 蜂窩織炎のようだけど…?
CASE07 疲労感や不眠が最近強くなってきたけど,うつ病のせいなの?
CASE08 立位で誘発される頻脈とは?
CASE09 双極性障害の既往がある高齢者の精神症状…原因は?
CASE10 貧血の原因は出血や栄養障害だけ?
CASE11 ビタミン欠乏じゃないの!?
CASE12 息切れが続くけれども器質的疾患が指摘できない
CASE13 不定愁訴と紹介されてきたけれど…
CASE14 全身の痛みがいつまでも治らない!
CASE15 CTもない僻地診療所で,夜間診療に頭痛患者!
CASE16 片側性の頭痛だけど,片頭痛でいいの?
CASE17 こんなに頭が痛いのに本当に異常がないの?
CASE18 頭痛+身体がだるく,風邪だと思っていたが…
CASE19 意識障害の原因がわからない!
CASE20 ピンポイントの腹痛?
CASE21 右脇腹が気持ち悪い
CASE22 持続性の血尿,左側腹部痛?
CASE23 ずっとお腹が痛いのに内科,婦人科,泌尿器科,整形外科で異常がない!?
CASE24 ピンポイントの腰痛?
CASE25 悶えるほどに胸が痛いのに原因がわからない!
CASE26 器質的疾患の見当たらない慢性の下痢?
CASE27 胃全摘後の慢性下痢
CASE28 肉も魚も食べていないけど,何にあたったの?
CASE29 手関節の痛みが治まらない
CASE30 全身痛くて力がはいらない…更年期障害?
CASE31 ふるえが止まらない!(その①)
CASE32 ふるえが止まらない!(その②)
臨床メモ
Plummer-Vinson症候群疑いの患者
ビタミンB12欠乏症を疑ったときの診察
ビタミンB3欠乏の精神症状
ビタミンB6といったらギンナン中毒
COFFEE BREAK
黒澤明「生きる」,「赤ひげ」
自然豊かな只見町
「それなら,会津に行ってみない?」
筆者が会津に赴任したのは,最も尊敬する恩師の一人よりもらったこの言葉がきっかけであった。
その頃筆者は,総合診療医として従事していく中で診断困難な例に遭うことが増え,診断できない自身の不甲斐なさに腹立たしくなるのと同時に,どうすれば診断できるのかと試行錯誤する日々の中にいた。上級医へ聞いたり,診断に特化した本を買い漁ったりしたものの,満足な結果は得られなかった。
そのような悩みを恩師に相談したところ,病歴と身体所見を重視し,必要最小限の検査で正確な診断を導く教育・指導体制を整えていた会津への異動の話を勧められた。
……そうして向かった会津医療センターで,見学時に衝撃を受けた。今までの診察で一体何を見ていたのかと自分が情けなくなるほど丁寧に病歴をとり,気にしたこともないような細部までの身体所見をとり,それも挙がるのか!という鑑別診断が並ぶ様子を目の当たりにした。
それまでの自分では診断困難としていたものが,ここで診察を受けていれば診断に至っていたのかもしれない。そう思った瞬間,病歴と身体所見をおろそかにしない診察技術を一から学び直そうと心機一転し,会津行きを決めた。
まだまだ未熟ではあるが,あれから数年経った今は確実に診断力が伸びたと自負している。
診断困難になる要因としては,疾患に対する知識不足ももちろんであるが,「気づくべき所見に気付けていない」ことも挙げられる。
本書は筆者が診断困難例の診療にあたったさい,学び直した病歴聴取・身体診察法から気づくことができたポイントをもとに,診断に至った症例を集めた。読者対象としては,冒頭の筆者と同じような悩みを持っていると思われる年代の医師向けとしている。さらに,同じような悩みを乗り越えてきた筆者の信頼する仲間にも執筆協力をいただいたため,様々な医師の視点や考え方が学べることも特色であると思う。
また,「え〜そんなの知らないよー」という,いわゆるシマウマ探しをするような,生涯で1,2回診るかどうかといった疾患は極力省いている。皆が知っているのに気づきにくかった疾患や,本書で学ぶことで今後診断する機会が増えるであろうと予想した疾患での構成を心がけた。
筆者自身も「あのときこれを知っていれば」と思わずにはいられない,掲載した症例に類似した過去の診断困難例がいくつも思い浮かぶ。
本書が,診断に迷う若手医師を導き,診断力の爆アゲに貢献できる1冊となることを願っている。
最後に,未熟な私に出版の機会を与えてくださり編集に尽力していただいた日本医事新報社の皆様,多忙にも関わらず監修をしていただいた山中克郎先生,突然の執筆協力依頼を快諾してくれた共著者の先生方に,心より感謝を申し上げます。