サルコペニアは,進行性および全身性の骨格筋量および骨格筋力の低下を特徴とする症候群である1)。肝疾患領域においても,筋肉量の減少と予後を検討した報告2)が散見され,サルコペニアは各種肝病態やその予後に影響するとされている。
アジアや欧州のサルコペニアの判定基準では,加齢による筋肉量や筋力の低下が指標とされている。2016年5月に,わが国でも肝疾患におけるサルコペニア判定基準2)が作成された。本判定基準の特徴として,①肝疾患におけるサルコペニアは,疾患・栄養に関係する二次性のサルコペニアが中心であり,年齢制限を撤廃していること,②筋力の判定には,測定法や煩雑さの観点から,歩行速度ではなく握力が用いられていること,③筋肉量の測定には,生体インピーダンス法(bioelectrical impedance analysis)に加え,CTを用いて第3腰椎レベルの筋肉量を測定し,身長で補正した骨格筋指数(skeletal muscle mass index:SMI)を採用したこと,などが挙げられる。
今後,この判定基準を用いて各種肝疾患とサルコペニアとの連関が明らかにされ,サルコペニアの制御による肝疾患の進展予防が可能となることを期待したい。
【文献】
1) Delmonico MJ, et al:J Am Geriatr Soc. 2007;55 (5):769-74.
2) 日本肝臓学会:肝疾患におけるサルコペニア判定基準. 第1版. 2016.
【解説】
立山雅邦*1,佐々木 裕*2 *1熊本大学消化器内科 *2同教授