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近年の梅毒感染の増加と母子感染対策【経口避妊薬が一般化し,コンドームの使用が減少。20,30歳代女性の管理が重要となる】

No.4915 (2018年07月07日発行) P.57

山田秀人 (神戸大学大学院医学研究科外科系講座産科婦人科学分野教授)

早川 智 (日本大学医学部病態病理学系微生物学分野教授)

登録日: 2018-07-05

最終更新日: 2018-07-03

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  • ここ数年,梅毒患者が急増しています。特に20~24歳の女性では2013年から3年間で患者が10倍に増えました。梅毒を知らないカップル,医師の判断ミス,未受診妊婦など多くの社会的要因がその増加の一因となっています。
    梅毒感染の現状と,母子感染対策を含めてどのように対処すればよいかについて,日本大学・早川 智先生にご解説をお願いします。

    【質問者】

    山田秀人 神戸大学大学院医学研究科外科系講座産科 婦人科学分野教授


    【回答】

    梅毒はTreponema pallidumによる慢性感染症で,性的接触による水平感染と感染女性の胎児に対する垂直感染の2つの感染経路があります。未治療の場合,垂直感染では死産や重篤な先天障害を発症したり,成人でも神経血管梅毒により死に至ることがあります。わが国では,1948年から梅毒発生の報告制度がありますが,1年間に約1万1000人が報告された1967年をピークとして,2011年まで減少してきました。しかし,2012年より上昇に転じ,この5年間に新規患者が毎年倍増し,2017年には5000例を突破しています。

    最近の特徴として,ハイリスクと考えられてきた男性同性愛者(men who have sex with men:MSM)に加えて,異性間交渉による若年女性の感染が増加している点があります。20~30歳代の女性患者は妊娠出産年齢に相当するため,垂直感染を防ぐ上でも管理が非常に重要です。梅毒反応は,妊婦検診の基本項目となっているために無症候のまま発見されることが多いのですが,経済的事情やわが国における在留資格から妊婦検診を受けない妊婦も少なくありません。このような患者では垂直感染のリスクが非常に高くなります。口腔を梅毒の初発病巣とすることが多いことも近年の特徴であり,初期疹を診ることの少なかった耳鼻科医や歯科医も,梅毒を鑑別診断に入れる必要があります。

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