厚生労働省は7月25日、中央社会保険医療協議会の「医療機関等の消費税負担に関する分科会」で、消費税率8%への引上げに伴う控除対象外消費税の補塡状況に関して、これまで公表されていた調査結果に誤りがあったとして、再調査した結果(表)を公表した。
表 消費税補塡率(1施設・1年間当たり)の状況 |
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2014年度(修正前) | 2016年度 | |
全体 〈歯科診療所、保険薬局含む〉 |
90.6%(102.07%) | 92.5% |
一般診療所 | 106.6%(105.72%) | 111.2% |
病院全体 | 82.9%(102.36%) | 85.0% |
一般病院 | 82.7%(101.25%) | 85.4% |
精神科病院 | 130.1%(134.47%) | 129.0% |
特定機能病院 | 61.4%(98.09%) | 61.7% |
こども病院 | 71.1%(95.39%) | 71.6% |
保険診療は消費税非課税となっており、医療機関は仕入れにかかる消費税の負担を最終消費者である患者等に転嫁できず、医療機関が負担する控除対象外消費税として医療界の長年の懸案事項となっている。2014年度診療報酬改定では、消費増税(5%→8%)への対応として、基本診療料(初・再診料、入院基本料など)の点数に上乗せする形で負担増分の補塡が図られた。
2015年11月に公表されていた病院全体の補塡率は100%を超えていたが、再調査では14年度が82.9%、16年度が85.0%で、補塡不足が生じていた。歯科診療所と保険薬局を含めた医療界全体の補塡率の推計についても、2014年度の数値が102.07%から90.6%へ修正された上に、16年度も92.5%と補塡不足であったことが示された。一般診療所の補塡率は再調査でも14年度、16年度ともに100%を超えていた。
ただし、医療機関の種類によって補塡率に大きなバラツキがみられる傾向は一貫していた。
2014年度のデータの誤りの原因について厚労省保険局は、DPC病院の包括部分の補塡状況の把握にミスがあったと説明。分析過程でDPC病院の複数月にまたがる入院日数を重複計上していたため、入院収益が実際より高く算出され、補塡率が高くなったという。
25日の分科会では、診療側の委員を中心に、批判の声が相次いだ。中川俊男委員(日本医師会)は「なぜこのデータ(再調査)が昨年11月までに出なかったのか。出ていれば(今年4月の改定などで)何らかの対応もできたはずなのに、補塡不足が結果として4年以上放置された。事はきわめて重大だ」と憤りを示し、厚労省に「猛省」を求めた。保険局医療課の矢田貝泰之保険医療企画調査室長は「(2019年10月に予定される)10%引上げ時には同様の不足が生じないよう努めたい」とし、再調査結果の公表時期については「作業に時間を要してしまった」と釈明した。
厚労省は2015年11月の同分科会で、消費税率8%引上げに伴う控除対象外消費税の負担増について、「ミクロ」(医療機関の種類別など)ではバラツキが見られるものの、「マクロ」では「概ね補塡されていることが確認された」と総括していた。再調査結果を受け、中川氏はこの総括の「撤回」を強く迫った。
矢田貝氏は「データに誤りがあった以上、(15年11月の総括は)正しくない。補塡率は約93%というのが現在の認識」と応じた。その上で、消費税率10%引上げに備え、補塡率のバラツキが生じた要因の分析を進め、補塡率がミクロとマクロの両面で100%に近づくような方策を検討していくと強調した。