腹腔鏡下肝切除は,保険収載に伴い一般的な治療となってきています。特に肝部分切除においては,今まで肝切除を行っていた大抵の施設で行われています。しかしmajor切除の肝葉切除は,まだハードルが高く十分に広がってきているとは言えません。出血や肺塞栓症など一般的な開腹切除よりも,一歩間違えれば重篤な状況になりえるかと思われます。
腹腔鏡下肝葉切除の今後の方向性とそれを安全に行いうる方策について,岩手医科大学・新田浩幸先生にご解説をお願いいたします。
【質問者】
片桐 聡 東京女子医科大学附属八千代医療センター 消化器外科准教授
腹腔鏡下肝葉切除は2016年に保険収載されましたが,まだ一般的には普及していない術式です。肝臓内視鏡外科研究会で行っている腹腔鏡下肝切除の前向き症例登録のデータを見ると,葉切除の割合は全国で行われている腹腔鏡下肝切除全体の約8%であり(約80%が部分切除と外側区域切除),まだ限られた施設でのみ行われているのが現状です。死亡率を見ると,腹腔鏡下肝切除全体の90日死亡率が0.22%,亜区域切除以上の大きな肝切除で0.67%と低率であり,全国で安全に行われていることが確認できます。
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