No.4922 (2018年08月25日発行) P.28
徳嶺譲芳 (杏林大学医学部麻酔科学教室教授)
松島久雄 (獨協医科大学埼玉医療センター救命救急センター救急医療科教授)
登録日: 2018-08-27
最終更新日: 2018-08-22
超音波ガイド下中心静脈穿刺は論理的な手技であり,超音波で見て刺すという単純な発想では成功しない
理論の理解を阻んでいるのは先入観である
超音波ガイド下中心静脈穿刺が真に有効であるためには,シミュレーショントレーニングが必須である
超音波ガイド下中心静脈穿刺は,「超音波でリスク評価を行うべき」という発想から標準手技となった
気の早い読者はこう考えるだろう,「理由なんてどうでもいい。早くやり方を教えてくれ!」と,しかし,本特集のタイトルは,「理解と実践のための第一歩」だということを忘れてはならない。実は,超音波ガイド下中心静脈穿刺(超音波ガイド法)が標準手技となった理由を理解することは,すなわち超音波ガイド法の本質を知ることと同じことなのだ。
仮に今この瞬間に,最短最速でやり方を教えたら結果はどうなるだろう。今まで400回以上のセミナーをやってきた筆者にはわかっている…手技を習得できるのは,10人に1人程度だ。「なぜ理解できないのか?」。それほど難解な理屈なのだろうか? いやいや,それはまったく逆で,あまりにも簡単すぎてわからないというのが本当だ。超音波ガイド法の理解を阻んでいる原因は先入観にある1)。だから,いくら文章で書いても理解されない。読者は先入観という眼鏡で,読みたくない部分を飛ばして読んでしまう。どんな秀才でも先入観があると本質を理解できない。心をしなやかにして空にすることができれば,この方法を簡単に理解できる。
本稿の目的は,先入観を取り除けるように,いくつかの話題を提供しつつ超音波ガイド法を受け入れる素地を築くことにある。一方で,超音波ガイド法を受け入れる素地があれば,あっという間にこの手技を習得できる。
それでは始めよう。最初の命題はこれだ。