監修: | 大瀧千代(前 大阪大学医学部附属病院麻酔科 病院教授) |
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編著: | 橘 一也(大阪母子医療センター麻酔科 主任部長) |
判型: | B6判 |
頁数: | 376頁 |
装丁: | 2色部分カラー |
発行日: | 2024年03月31日 |
ISBN: | 978-4-7849-2481-3 |
版数: | 第1版 |
付録: | 無料の電子版が付属(巻末のシリアルコードを登録すると、本書の全ページを閲覧できます) |
難解な産科麻酔を“見える化”
●複雑な産科麻酔の手技と知識の要点を,コンパクトに,わかりやすく提示。
●視覚的に理解できる図表とチャートを豊富に掲載。
●産科関連疾患の病態,産科麻酔に関連した手技・手順に関する情報を一目で把握できる。
●実臨床で,瞬時に,スムーズに,自信を持って行動できる!
●ポケット麻酔シリーズ第4弾。既刊『胸部手術の麻酔』,『神経麻酔と神経集中治療の基礎と実践』,『麻酔における気道管理の手技と知識を知る』もぜひ。
診療科: | 麻酔・ペインクリニック | 麻酔・ペインクリニック |
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第1章 妊婦・胎児の基本
1 麻酔に必要な妊娠生理学的変化の知識
1 妊娠に伴う母体の変化 橘 一也
2 妊娠経過および胎児の発生・発達 橘 一也
2 薬剤の胎盤通過性 濱場啓史
3 分娩痛 橘 一也
第2章 産婦人科分娩所見のみかた
1 分娩の評価 柿ヶ野藍子
2 CTGの基本 柿ヶ野藍子
3 異常CTG 柿ヶ野藍子
4 分娩の三要素と分娩経過のとらえ方 柿ヶ野藍子
5 胎児超音波の基本 金川武司
6 器械分娩 柿ヶ野藍子
7 帝王切開の適応 柿ヶ野藍子
8 生殖医療の種類 柿ヶ野藍子
第3章 麻酔総論
1 局所麻酔薬 占部大地
2 全身麻酔薬:妊婦のファーマコキネティクスとファーマコダイナミクス 萩平 哲
3 妊娠中の手術
1 手術時期・通常手術 紀之本茜
2 腹腔鏡の手術 紀之本茜
4 胎児治療の麻酔 盤井多美子
5 生殖医療の麻酔 盤井多美子
第4章 無痛分娩の麻酔
1 無痛分娩導入に必要な用意 魚川礼子
2 無痛分娩に必要なモニター・記録 魚川礼子
3 無痛分娩麻酔前処置・術前検査・問診 魚川礼子
4 無痛分娩の基本
1 無痛分娩の導入 本庄郁子
2 無痛分娩の維持 本庄郁子
5 痛みと状況に合わせた無痛分娩 阪上 愛
6 トラブルシューティング
1 痛みがコントロールできないときの鑑別チャート 阪上 愛
2 突出痛に対する薬剤使用 阪上 愛
3 そのほかの対処方法 阪上 愛
7 無痛分娩からの帝王切開
1 拡大硬膜外麻酔プロトコール 西村俊輝
2 拡大硬膜外麻酔プロトコール以外 西村俊輝
8 抗凝固とカテ穿刺・カテ抜去基準 木西悠紀
9 静脈鎮痛法・亜酸化窒素(笑気)鎮痛法 木西悠紀
10 病的適応の無痛分娩 黒田真理子
11 病的肥満妊婦の無痛分娩 魚川礼子
12 流産・中期中絶・死産の無痛分娩法 黒田真理子
13 外回転の麻酔 弓場智雄
14 無痛分娩に使用する手技
1 硬膜外麻酔,脊髄くも膜下麻酔,CSEA,DPE 西村俊輝
2 無痛分娩に使用されるサドルブロック,仙骨硬膜外麻酔,陰部神経ブロック 前田晃彦
3 産科で使用する神経ブロックの解説 宇津正二
4 産科医の無痛分娩プロトコール 味村和哉
15 抗血栓療法中の区域麻酔 木西悠紀
第5章 帝王切開
1 子宮収縮薬・弛緩薬 川瀬小百合
2 各麻酔法 阪上 愛
3 輸液管理 阪上 愛
4 術後鎮痛 阪上 愛
5 術後鎮痛の腹横筋膜面ブロック,腹直筋鞘ブロック 竹下 淳
6 rapid sequence spinal(RSS) 阪上 愛
7 帝王切開の全身麻酔 阪上 愛
8 挿管困難対応 阪上 愛
9 抗菌薬投与,SSI 川瀬小百合
第6章 異常妊娠・異常分娩の麻酔科対応
1 前期破水(PROM) 山本由美子
2 妊娠高血圧症候群 木西悠紀
3 子癇 木西悠紀
4 HELLP症候群 木西悠紀
5 双胎妊娠・不妊治療の問題 木西悠紀
6 羊水異常・FGR(胎児発育不全) 木西悠紀
7 過強陣痛・微弱陣痛・分娩停止(診断,問題点) 橘 一也
8 臍帯脱出(診断,問題点) 橘 一也
9 産科出血全般
1 ガイドライン,出血の種類,ショックインデックス 阪上 愛
2 フィブリノゲン製剤・輸血法 阪上 愛
3 ROTEM®とTEG® 木西悠紀
4 IVR(interventional radiology) 橘 一也
10 妊娠中産科出血
1 前置胎盤・低置胎盤 本庄郁子
2 常位胎盤早期剥離 本庄郁子
11 分娩・分娩中産科出血
1 子宮破裂 本庄郁子
2 子宮内反症 本庄郁子
3 癒着胎盤 本庄郁子
4 産道裂傷・弛緩出血 本庄郁子
12 羊水塞栓症 木西悠紀
13 産科DIC全般 黒田真理子
14 肺血栓塞栓症(PTE),深部静脈血栓症(DVT) 黒田真理子
15 周産期心筋症 桐山有紀
16 血液型不適合妊娠 木西悠紀
第7章 合併症妊婦の麻酔
1 合併症妊娠の問題 西垣 厚
2 脳・脊髄疾患 山本由美子
3 心疾患
1 麻酔に関する問題 橘 一也
2 心疾患患者の妊娠・出産の適応,管理 橘 一也
3 成人先天性心疾患 橘 一也
4 呼吸器疾患(喘息) 橘 一也
5 内分泌疾患 占部大地
6 筋骨格疾患,神経疾患 和田愛子
7 血液疾患
1 ITPの区域麻酔適応 中村さやか
2 抗リン脂質抗体症候群 橘 一也
8 感染症 阪上 愛
第8章 麻酔合併症
1 頭痛
1 硬膜穿刺後頭痛(PDPH) 角 千里
2 PDPH以外の頭痛 角 千里
2 神経障害 黒田真理子
3 局所麻酔薬中毒 占部大地
4 硬膜外血腫・膿瘍 魚川礼子
5 高位脊髄くも膜下麻酔,全脊髄くも膜下麻酔 魚川礼子
6 硬膜下ブロック(硬膜下腔へのカテーテル迷入) 魚川礼子
7 脊髄くも膜下麻酔後低血圧 播磨 恵
8 アナフィラキシー 播磨 恵
9 悪心・嘔吐 播磨 恵
第9章 蘇生法
1 妊婦蘇生法(死戦期帝王切開も含めて) 川瀬小百合
2 新生児蘇生尾上泰祐、望月成隆
第10章 使える図やスケール
1 デルマトーム図 黒田真理子
2 鎮痛評価スケールと修正Bromageスケール 黒田真理子
3 MMTほか 黒田真理子
4 下肢神経支配領域 川瀬小百合
索引
本書『産科麻酔に必要な知識と手技が図とチャートでわかる本』を手に取っていただきありがとうございます。
本書は,現代の医療環境において不可欠な産科麻酔の実践に焦点を当て,手技と知識の要点をわかりやすく提示することを目的としています。複雑な産科麻酔の手技やプロセスを理解しやすくするため,視覚的に理解できる図表とチャートを豊富に活用しています。これにより,読者は産科関連疾患の病態,産科麻酔に関連した手技・手順に関する情報を一目で把握でき,実践においてより自信を持って行動できるようになるでしょう。
産科麻酔の臨床現場では,起こっている現症やバイタルサインの変化から瞬時に様々な可能性を考え,鑑別しながら対処を進めていかねばならない状況があります。直前まで笑顔で会話をしていた妊婦さんが突然意識を消失することも経験するでしょう。そのような場面でテキストを見ながら時間をかけて対処法を検討している場合ではありません。麻酔科医はこのような状況への対応のプロフェッショナルですが,妊婦さんであるがゆえに,非妊婦さんとは異なった鑑別診断や特殊な対応を,短時間のうちに行わねばならないことも多くあります。このような状況において,本書で掲載している図表やチャートが瞬時に頭の中に浮かび,スムーズな対応に繋がればと願っています。私自身,麻酔科の仲間と産科麻酔を深掘りする中で,改めて産科麻酔の難しさや特殊性に日々再発見があります。多職種と会話をし,連携を取りながら新たな命の誕生に今も日々幸せな気分になります。
本書をご執筆いただいた先生方は,産科および産科麻酔領域の第一線でご活躍の専門家です。先生方の技術と知識が本書に凝縮されています。本書が読者の産科麻酔における実践に寄与し,患者の安全と幸福な出産を支える一助となることを期待しています。また,臨床の現場での活用はもちろんのこと,座学の助けとして臨床医の成長を促進するための一冊となることを期待しています。そして麻酔科医による安全な産科麻酔が本邦においてもより普及しますよう心から願っております。
最後になりましたが,本書の制作をご提案いただき,構想の段階から数多くのアドバイス,サポートをいただいた日本医事新報社編集局書籍課の長沢雅さんには心から感謝申し上げます。
2024年3月吉日
大阪母子医療センター麻酔科 橘 一也
前 大阪大学医学部附属病院麻酔科 大瀧千代