日本外科学会は31日、外科医の労働時間短縮のため、外科医の業務を補助する新たな医療職種の創設を求める要望書を厚生労働省の鈴木俊彦事務次官に手交した。
要望書では「外科医は他の診療科の医師と比較しても労働時間が極めて長く、本学会の調査でも週60時間以上労働している医師の割合は70%を超えており、労働時間短縮は急務」と強調する一方、諸外国では、書類作成、手術後の病棟管理業務、術中の補助等を他の医療職種が担うことで外科医が手術に集中し、十分な症例数を確保しつつ、労働時間を短縮できる環境があることを紹介。日本の看護師の特定行為研修制度については「外科医の業務のうち多くの時間を占める手術後の病棟管理業務を安心して包括的にタスク・シフティングするためには、個別の行為ごとにしか業務を担うことができないものであり、研修終了者も1000名にも満たないような状況」と指摘した。
その上で「外科医の働き方改革を進めていくために、十分な医学的臨床能力を有していることが担保され、手術後の病棟管理業務、術中の補助等を担うことができる医療職種が速やかに充実していくことが必要」とし、同学会として「諸外国のように、外科医の技術の維持と働き方改革を両立できる新たな制度創設を要望する」と求めた。
手交後に森正樹理事長と馬場秀夫外科医労働環境改善委員会委員長が記者団の取材に応じた。
馬場氏は、1994年~2016年の間に外科医数が25%減少し、年齢層でみると20~30代の外科医が減少した一方、近年、基礎疾患を有する高齢者の手術機会の増加とロボット手術など手技の高度化により、外科医の労働時間が増加する環境にあることを説明。「外科は時間外労働が多く、訴訟リスクもあることが前面に出ると、ますます若い医師が少なくなり、(将来的に)今の医療水準を担保できなくなる」との危機感を表明し、改めて「外科医をサポートできる職種の新設を求めたい」と訴えた。