【胆管の拡張,非拡張に応じた適切な治療法は未確立。病態の解明が望まれる】
先天性胆道拡張症は「総胆管拡張症」「総胆管囊腫」など様々な名称で呼ばれてきたが,2015年に「先天性胆道拡張症の診断基準」1)で「先天性胆道拡張症」と統一され,「総胆管を含む肝外胆管が限局性に拡張する先天性の形成異常で,全例に膵・胆管合流異常を合併する戸谷Ⅰa型,Ⅰc型とⅣ-A型を狭義の先天性胆道拡張症と定義する」とされた。先天性胆道拡張症の分類は,世界的に戸谷分類が用いられている。しかし,胆管の拡張,非拡張をめぐる諸問題を含め,膵・胆管合流異常の治療法は確立されていない。
日本消化器外科学会のアンサーパッドを用いた調査(16年)で,「先天性胆道拡張症をどのように診断しているか」という質問に対して,「胆管径(10mm以上を拡張あり)と胆管の形の両方を考慮している」が65%と,回答の半数以上を占めた。胆管拡張例は肝外胆管切除が必要であることは周知されている。一方,非拡張例においては,胆管癌の発生率が低いこと,膵内胆管の完全切除が困難であり,膵管損傷など致命的な術後合併症を起こす可能性があることなどから,胆摘のみとする施設が多い。
今後も日本膵・胆管合流異常研究会の全国登録により,先天性胆道拡張症の病態,適切な手術が解明されることを望む。
【文献】
1) 濱田吉則, 他:胆道. 2015;29(5):870-3.
【解説】
堀口明彦*1,浅野之夫*2,守瀬善一*3 藤田保健衛生大学坂文種報徳會病院消化器外科 *1教授*2講師 *3藤田保健衛生大学総合消化器外科教授