(神奈川県 S)
【現在は負荷試験なしで遺伝子診断をオーダーすることが多い】
尿細管性アシドーシスは,古典的には1型(遠位型),2型(近位型),3型(混合型),4型(高カリウム血症)に分類されます。また,病因として遺伝性および二次性に分類されます。二次性としては薬剤性,自己免疫疾患等が挙げられます。
ご質問の負荷試験は,遺伝性尿細管性アシドーシスが疑われ,1型と2型を鑑別するために行われてきました。1型はH+(プロトンイオン)の排泄障害による尿酸性化障害を認め,2型はHCO3-再吸収障害を認めるため,それぞれアニオンギャップ正常のアシドーシスをきたします。この鑑別のための負荷試験には,①塩化アンモニウム負荷試験,②フロセミド負荷試験,③重炭酸イオン負荷試験が挙げられます。
①②は尿の酸性化能を調べるための検査で,1型ではH+の排泄障害のため尿pHが5.5以下に低下しません。一方,③はHCO3-の再吸収能を見るための検査であり,2型ではHCO3-再吸収障害のため,排泄率の高値を認めます。これらの特徴により1型,2型の鑑別が可能となります。その具体的方法に関しては大変よくまとめられている成書をご参照下さい1)~3)。
しかし,最近は遺伝子解析技術の進歩により,容易に遺伝子診断のオーダーが可能となっています。特に次世代シークエンサーによる解析が一般的となっていて,原因遺伝子の網羅的解析が行われています。そのため,臨床的に遺伝性尿細管性アシドーシスが疑われた場合,強いアシドーシスがあるにもかかわらず尿pHが5.5以上であった場合は1型,5.5以下であった場合は2型を想定するにとどめ,負荷試験なしで遺伝子診断をオーダーし,確定診断を行うという手法が一般的となっております。ただし,その病態を正しく理解するためには,負荷試験は現在も非常に重要であり,是非とも行って頂きたいと考えています。
【文献】
1) 遠藤 周:小児内科. 2013;45(5):937-9.
2) 野津寛大:小児内科. 2013;45(5):940-1.
3) 佐々木悟郎:小児内科. 2013;45(5):942-3.
【回答者】
野津寛大 神戸大学大学院医学研究科内科系講座 小児科学分野こども急性疾患学部門特命教授