近年、高齢化が急速に進み、国民の4人に1人以上が65歳以上の高齢者です。そして核家族化が進むことによって、1人暮らしが増えていきます。わが国では在宅医療や在宅看取りが推進されています。しかし、在宅における看取りが増える前に孤独死が増えているようです。われわれは、単身世帯者が自宅で死亡した場合を孤独死と呼んでいます。
孤独死の定義を調べたのですが、法令や行政の文書で定められた正確な定義はありませんでした。見つかったのは、内閣府が2010年に発行した『高齢社会白書』における記載で、「誰にも看取られることなく息を引き取り、その後、相当期間放置されるような悲惨な孤立死」というものでした。しばらく顔をみない、新聞が溜まっている、異臭がするなどの通報で発覚することがあります。この時点で相当期間放置されているということになります。確かに、誰にも看取られないという寂しさのうえに、変わり果てた姿になりますから、悲惨という言葉が適切かもしれません。
東京23区は監察医制度が施行されていますから、死体で発見された場合には、すべて監察医が扱います。ある年に同施設で扱った異状死のうち、孤独死は男性で7.0%、女性で3.9%でした。さらに、孤独死した人の平均年齢を調べると、男性で63歳、女性で72歳と、その地区の人口集団の死亡年齢(男性74歳、女性80歳)よりも低いことが分かりました。死因としては、病死・自然死がほとんどですが、中には死後変化が高度で判定できないものもありました。
また、大阪市内の異状死を取り扱う機関である大阪府監察医事務所の調査によると、孤独死が発見されるのは死後平均で男性は6.8日、女性は2.4日でした。孤独死の年齢群別に、発見までの平均経過日数を調べると、90歳以上は死後約4日で、70歳台は死後約5日で発見されているのに対し、50歳台は死後約9日経過していました。高齢になると周囲の人や家族も心配し、頻繁に確認してもらえますが、50歳台では大丈夫だろうということで、気に留めてもらえないのかもしれません。発見に至ったきっかけを調べると、日頃から介護を受けており、介護者が訪れた時に発見したという例が、最も早く発見されるようで、死後平均2.7日経過していました。
介護を受けていたり、親密な付き合いがある場合には、万一のことが起こっても誰かが間もなく発見してくれます。したがって、社会的に孤立している状態をなくすことが重要です。1人暮らしの高齢者に対しては、行政が積極的に介入して、孤立することがないような対策を推進すべきと考えます。
ある地域では、1人暮らしの高齢者に対して近隣の住民複数が見守りを行うという取り組みを行っています。すなわち、ご本人を見かけるか否かはもちろんのこと、家の電気がついたり消えたりしているか、洗濯物に変化があるかなどを日頃から確認するのです。このような取り組みは、孤独死を予防するだけでなく、高齢者が急性疾患や不慮の事故に遭遇して身動きが取れなくなった際に救い手を差し伸べることにもつながります。地域において1人暮らしの高齢者を守る取り組みが、まず求められているようです。