【質問者】
菅谷 誠 国際医療福祉大学医学部皮膚科主任教授
【タキサン系抗癌剤と放射線を同時併用するconcurrent chemoradiotherapy】
皮膚血管肉腫の世界的な標準治療は広範囲切除と術後放射線治療で,欧米の5年生存率はおよそ30~40%程度です。一方でわが国の症例は予後が非常に不良で,5年生存率は10%以下です1)。欧米の研究で年齢,人種,組織学的グレード,腫瘍の大きさ,腫瘍の切除度をもとに低リスク,中間リスク,高リスクの3つに分類したところ,広範囲切除と術後放射線治療により低・中間リスク症例の予後は良好であったのに対して,高リスク症例は予後不良で生存期間中央値は1.6年でした2)。
なお,わが国で遠隔転移がなく手術を行った症例の生存期間中央値は約20カ月であり1),これはわが国の症例の多くが欧米の高リスク症例に当てはまることを意味します。つまり,欧米で標準とされる広範囲切除と術後放射線治療は,低~中間リスクに分類される症例(腫瘍径<3cmで年齢<70歳など)が適応と考えるのが妥当で,わが国に多い高齢者で腫瘍径の大きい高リスク症例は欧米でもその治療に難渋しています。
残り1,105文字あります
会員登録頂くことで利用範囲が広がります。 » 会員登録する