皮膚癌薬物療法においては有効性の高い,推奨できる確実なレジメンは少なく,また,ごく最近までEBMに基づいたレジメンはほとんど皆無(EBMそのものが希薄)でした。
しかし,静岡がんセンター皮膚科ではこれまでの40余年の皮膚科医の経験値と,ごく最近のEBMの手法で導かれたレジメンを最大限に活かした皮膚癌レジメンを実践してきました。今回,それらを『静がんメソッド 静岡がんセンターから学ぶ最新化学療法&有害事象マネジメント 皮膚癌編』としてまとめることができました。本書では,特に用法においてできるだけ患者さんが楽に治療を受けられるように配慮しています。また,投与する医療者にとっても扱いやすいように工夫しています。両者にとってメリットが得られれば幸いです。
また,最近のメラノーマの新規治療薬の開発により,目まぐるしく新レジメンが登場しています。さらに近い将来において新薬,あるいは併用療法が登場する予定です。しかもこれらの新規治療薬には人類初の免疫チェックポイント阻害薬が含まれているため,作用機序や副作用発現においては未経験なことや未知のこともたくさんあると思われます。そのため副作用の早期発見と早期対策が最も重要であると考えていますが,今後,外来での通院薬物療法が増えることが確実視されていることから,多職種による対応が必須となることでしょう。各施設においてもレジメン実行に先立って,必ず多職種との連携を構築することが強く望まれます。本書がその一助になれば幸甚です。
静岡県立静岡がんセンター 皮膚科部長
清原祥夫