【左葉グラフト第一選択,グラフト体重比(GRWR)下限の低下,門脈圧制御からなる生体肝移植strategy】
生体肝移植はドナーの安全性が最優先であるが,レシピエントの成績ももちろん重要である。そこで筆者らは,その両者を満たすべく,①左葉グラフト第一選択,②グラフト体重比(GRWR)下限の低下,③門脈圧制御,の3項目からなる生体肝移植strategyを考案した。
ドナーの安全性の観点からは,術後合併症が少なく1),残肝容積の大きい左葉グラフトが望ましい。しかし,左葉グラフトは右葉グラフトより小さいため,GRWR 0.8%以上の基準を満たさないことが多い。そこで当科では,GRWRの下限を2007年12月から0.7%,09年4月から0.6%と段階的に低下させてきた。しかし,GRWR下限を低下させると,当然small-for-size syndromeの危険性が高まる。そこで,術中最終門脈圧を15mmHg以下に制御するようにした2)。その結果,GRWR下限を低下させても,特にsmall-for-size syndromeが増えることなく,GRWR 0.8%以上例とGRWR 0.8%以下例で移植後成績も有意差を認めなかった3)。
【文献】
1) Iida T, et al:Transplantation. 2010;89(9): 1163-4.
2) Ogura Y, et al:Liver Transpl. 2010;16(6):718-28.
3) Kaido T, et al:Transplant Proc. 2011;43(6): 2391-3.
【解説】
海道利実 京都大学肝胆膵・移植外科准教授