【安全性と根治性を備え,急速に普及する低侵襲手術】
胸腔鏡手術:1993年に最初の胸腔鏡下肺葉切除術が報告されて以来1),肺癌に対する胸腔鏡下切除術は広く認知され,現在に至っている。
わが国では,96年には肺癌に対する肺葉切除の3.8%が胸腔鏡下に施行されていたが,2014年には70%の症例が胸腔鏡下で施行されている2)。開胸手術との比較が様々な後方視的研究で行われ,低侵襲性のみならず根治性においても劣らないことが示されており,肺癌ガイドラインでは1期肺癌に対してC1(RCTがないため科学的根拠はないが行うことを考慮してもよい)3)とされている。技術の普及・向上により,低侵襲化をさらに進めた単孔式VATSや剣状突起下アプローチなども,徐々に普及している。
ロボット支援手術:多関節を持つ鉗子と立体視可能なスコープを備えたダヴィンチ手術システムを用いた肺葉切除術は,02年に最初に報告された。胸腔鏡手術と同様,低侵襲性・根治性について多数の検討がなされ,開胸による手術に比較して優れているが,胸腔鏡手術とは同等であるとされている4)。わが国では,09年承認後は数%程度の症例数であったが,18年春に保険収載されたため,今後症例数は増加すると予想される。
【文献】
1) Walker WS, et al:Thorax. 1993;48(9):921-4.
2) Committee for Scientific Affairs, The Japanese Association for Thoracic Surgery:Gen Thorac Cardiovasc Surg. 2016;64(11):665-97.
3) 日本肺癌学会, 編:肺癌診療ガイドライン 2017年版. 金原出版, 2017.
4) Agzarian J, et al:Semin Thorac Cardiovasc Surg. 2016;28(1):182-92.
【解説】
佐藤寿彦 京都大学医学部附属病院 臨床研究総合センター開発企画部准教授