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救急集中治療分野における高気圧酸素治療(HBO)の現状について

No.5221 (2024年05月18日発行) P.57

岩下義明 (島根大学医学部救急医学講座教授/島根大学医学部附属病院救命救急センターセンター長)

山田実貴人 (中部国際医療センター副病院長/救急部門長)

登録日: 2024-05-15

最終更新日: 2024-05-14

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  • 救急集中治療分野における高気圧酸素治療(hyperbaric oxygen therapy:HBO)の現状について,中部国際医療センター・山田実貴人先生にご解説をお願いします。

    【質問者】岩下義明 島根大学医学部救急医学講座教授/島根大学医学部附属病院救命救急センターセンター長


    【回答】

    【圧力の高い気圧環境で酸素を吸入させて,全身に酸素を供給する治療である】

    HBOは,大気圧よりも高い気圧環境の中に患者を収容し,高濃度の酸素を吸入させて病態の改善を図る治療法です。日本高気圧環境・潜水医学会や厚生労働省の基準では,2絶対気圧(大気圧の2倍,水深約10mの圧力)で1時間以上100%酸素を呼吸すること,としています。

    この原理は,血液中では通常,赤血球内にあるヘモグロビンの95%以上が酸素と結びつく結合型酸素と,血液の液体成分である血清に酸素が溶け込む溶解型酸素があるためです。HBOでは高気圧環境下で酸素を吸入させることで,Henry-Daltonの法則により圧力に応じて溶解型酸素の増加による治療効果を発揮します。減圧症・末梢循環不全・損傷組織の創傷不全・感染症等に対して,全身や局所の低酸素症を改善させる治療法です。また,Boyle-Charllsの法則で,加圧されることにより気体の体積は減少し,空気塞栓,減圧症,腸閉塞に対して効果があります。

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