様々な薬剤の有用性が報告されるようになった心不全(HF)治療だが、入院例では50%以上が半年以内に再入院するとする報告もある[Desai AS, et al. 2012]。そのため退院直後の再入院リスク低減が肝要となるが、有望な成績がペンシルバニア州立大学(米国)のJohn P. Boehmer氏らからもたらされた。非侵襲型心モニタデバイス装着が退院後90日間のHF再入院リスクを相対的に40%近く低下させる可能性があるという。JACC Heart Failure誌10月9日掲載論文を紹介する。
解析対象は直近6カ月にHF増悪の既往歴がある、HF退院から10日以内の494例である。左室駆出率の高低は問わない。なお心デバイス植え込み例は除外されている。
これら494例は全例、貼付型心モニタデバイスを90日間装着した(除:入浴時)。同デバイスは心電図と心拍数に加え、肺うっ血を評価できる。
さて494例という2つのレジストリの併合数である。片方のレジストリ(249例)では医師が、モニタリングしたデータ(週1回更新)にウェブサイト経由でアクセスでき、データに応じて治療を変更できた(治療調整群)。他方もう1つのレジストリ(245例)ではセンサからのデータは医師/患者ともに知らされなかった(対照群)。なお両レジストリの登録は、ほぼ同時期に実施されている。
・背景因子
「対照」群と「治療調整」群の背景因子に大きな有意差はなかった。年齢分布は「65歳以上」が57%、女性が42%を占めた。また「左室駆出率≦40%」の占める割合は47%だった。一方、治療薬では有意差が散見された。すなわち、「治療調整」群では観察開始時、ARB、ARNi、SGLT2阻害薬、カルシウム拮抗薬の服用率が有意に高かった(差は最大で10%強)。
・90日間HF入院(1次評価項目)
その結果、「90日間HF入院」発生率は「治療調整」群:13%、「対照」群:20%だった(治療必要数:15)。「治療調整」群における背景因子補正後ハザード比(HR)を求めると、0.62の有意低値となった(P=0.03。95%CI表示なし)。両群のカプランマイヤー曲線は観察開始20日前後で乖離が始まり、90日目までその差は広がり続けた。
・90日間HF入院/増悪(2次評価項目)
同様にHF増悪(救急受診)を含む「HF入院/増悪」も、「治療調整」群におけるHRは0.64の有意低値だった(P=0.03)。さらにこれらに「死亡」を加えても同様で、「治療調整」群におけるHRは0.62(P=0.02)だった。
Boehmer氏らは本研究の利点を、モニタデバイスが非侵襲的である点に求めている。すなわちデバイスを植え込むという負担を避けられ、さらに再入院高リスク期間のみの使用で、HF再入院リスクを抑制できる可能性がある。
本研究は検討されたデバイスの製造販売会社であるZOLL Medical Corp.から資金提供を受けて実施された。