【再発率上昇を避けるため,バイオマーカーの組み入れは必要条件である】
肝細胞癌(以下肝癌)に対する肝移植は,がんのみならず,その発生母地であるウイルス性肝硬変などの障害肝も同時に置換することができるため,臨床的意義は非常に大きい。『肝癌診療ガイドライン2017年版』1)での肝移植の推奨は,Child-Pugh分類Cでミラノ基準(5cm以下単発,または3cm以下3個以下)内肝癌であるが,実臨床では,肝機能にかかわらず,集学的治療の「最後の砦」として,肝移植が行われている。しかし,ミラノ基準は厳しすぎるとの考えから,国内外で拡大移植適応が提唱されてきた。腫瘍最大径と腫瘍個数を拡大すると,当然,再発率が上昇する。
そこで筆者らは,当科肝癌肝移植症例の後ろ向き検討の結果より,腫瘍最大径5cm以下,腫瘍個数10個以下に加え,腫瘍マーカーであるPIVKA-Ⅱ 400mAU/mLの基準値以下の3つをすべて満たすKyoto基準を樹立した2)。その結果,Kyoto基準内肝癌の5年生存率,5年再発率は各々82%,4%と,Kyoto基準外肝癌より有意に良好であり,安全に移植適応を拡大できた3)。したがって,拡大移植適応の樹立において,バイオマーカーの組み入れは必要条件である。
【文献】
1) 日本肝臓学会, 編:肝癌診療ガイドライン2017年版. 金原出版, 2017.
2) Ito T, et al:Liver Transpl. 2007;13(12):1637-44.
3) Kaido T, et al:Surgery. 2013;154(5):1053-60.
【解説】
海道利実 京都大学肝胆膵・移植外科准教授