国立感染症研究所は1月24日、新機序の抗インフルエンザ薬(キャップ依存性エンドヌクレアーゼ阻害薬)のバロキサビル マルボキシル(販売名:ゾフルーザ)について、同薬への感受性が低下したアミノ酸変異ウイルス(耐性株)が昨年12月に検出されたことを公表した。21日現在、A/H3亜型においては、遺伝子解析を実施した21株中2株(9.5%)に変異が認められている。A/H1N1pdm2009とBからは検出されていない。2018/19シーズンにおけるノイラミニダーゼ(NA)阻害薬耐性株の検出は、21日時点では報告されていない。
バロキサビルの臨床試験では、薬剤投与によりI38T/M/Fというアミノ酸変異を持つ耐性株が検出され、これらの変異が薬剤感受性の低下に関与することが判明。第Ⅲ相試験のデータによると耐性株の検出率は12歳以上で9.7%、12歳未満で23.4%となっており、日本感染症学会は昨年10月に耐性株の出現を「高頻度」とする見解を示した。耐性株が検出された患者では、罹病期間の延長やウイルス力価の再上昇も報告されている。
今回公表された耐性株(I38T変異)は、昨年12月に横浜市で、6歳と7歳の小児から分離されたもの。横浜市地方衛生研究所などのチームがEurosurveillance誌へ報告したところによると、両人は検体採取時にバロキサビルの投与を受けていた。人から人への感染伝播ではなく、バロキサビル投与後に患者の体内で増殖した可能性が高いという。バロキサビルへの感受性は変異のない株に比べ76~120倍低下していたが、NA阻害薬4剤に対しては感受性を示した。
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